体が椅子によって弱くなっている状態で、物を持ち上げようとかがんだり、姿勢を変えたりすると、もろくなった体は簡単にダメージを受ける。これこそが、最も快適な社会で腰痛が蔓延し、あらゆる動きを広くこなす「動きの万能型」にはほとんどみられない決定的な理由だろう。
たとえばアジアや中東で、しゃがんだ姿勢で休み、日常の多くの動作を行う人びとには、股関節や腰の問題がほとんどない。
私たちは現代ならではの痛みが生じても、その声に耳を傾けようとしない。痛みは昔もいまも進化上の利点だ。それは、危険につながる動きをしていることを脳が知らせる仕組みであり、身を守るための危険信号でもある。不快というサインを使い、健康と安全のために行動を変えることを促すメッセージにほかならない。
だが、私たちは薬や手術、安静といった手段で、その声をかき消している。それらは手軽な対処法ではあるが、解決にならないことはさまざまな研究から明らかだ。
腰痛治療のあらゆるデータを検証した12人の医師と研究者による国際チームは、「安静、オピオイド、脊椎注射、手術……これらでは腰痛による障害も、その長期的な影響も減らせない」と記している。
腰痛が招いたオピオイド依存
腰痛は、オピオイドが処方される主な理由のひとつだ。だが研究者たちは、こうした薬は痛みを一時的に和らげるだけで、長く使っても効果が続かないことを明らかにしている。効果を持続させるには、より多くの、より強い薬を飲み続けるしかなくなる。
その結果、20%の患者が依存症に陥る。実際、強力な鎮痛薬で腰痛を治療することが、オピオイド危機〔訳注 アメリカで1990年代後半から、鎮痛薬の過剰処方により依存症と死亡が急増した社会問題〕を引き起こした大きな要因だった、と研究は示している。
次に手術の場合だ。アメリカでは手術費用が極めて高額になるが、その話はひとまず脇に置いておこう。
シンシナティ大学医学部の研究者たちは、重い腰痛で仕事に戻れなくなっていた約1500人の労働者を追跡した。そのうちの半数は手術を受け、半数は受けなかった。2年後、手術を受けた労働者の75%が依然として激しい痛みに苦しみ、仕事に復帰できていなかった。
ところが手術を受けなかったグループの67%は仕事に戻っていた。さらに、手術を受けたグループでは36%が合併症を起こし、27%が別の手術を必要とし、全体としてオピオイド使用率も高かった。


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