仕事で身体を使う場合も、求められる動きは特定の、反復的で、身体にダメージをもたらしかねない動きであることが多い。「いまではもう、毎日の動きの必要量を満たせるような『動きの万能型』はほとんど残っていません」とボーマンは言う。
狩猟採集民も私たちと同じくらい休息していた。ただし、その休み方は完全に力を抜いた姿勢ではなく、身体の筋肉を軽く使い続ける状態だった。そのため彼らは、慢性的な腰痛に悩まされることがほとんどなかったと思われる。
この違いを理解したければ、レイジーボーイのリクライニングチェアと、背もたれのないスツール、そしてしゃがんだ姿勢の違いを考えるとよい、とリーバーマンは説明してくれた。
「背もたれのある椅子は、スツールやしゃがんだ姿勢よりも身体への要求がさらに少ない。だから非常に快適なのです」と彼は言う。
私たちは快適な椅子に座ると、座るというよりクッション材に沈み込む。するとあらゆる筋肉が緩み、まるで脳が停止したように全身がだらけていく。「ですが、人間の身体は椅子にはあまり適していないのです」とリーバーマンは言う。
狩猟採集民は休憩時にも筋肉を使っている
デイビッド・ライクレンは、狩猟採集民の休憩時の姿勢が筋肉の動きにどう影響するかを調べた。彼らは主にしゃがむか、地面に直接座って休む。「背もたれに寄りかからずにしゃがんだり座ったりすると、当然ながら、腰まわりの筋肉の活動が大きく高まっていました」とライクレンは言う。
しゃがむ姿勢や膝立ちの姿勢は、下半身から体幹までの筋肉を軽く、まんべんなく使うことになる。スツールに座る場合でも、直立を保つために体幹と背筋を使わなければならない。
研究の結論はこうなる。「人間の生理は、動かない時間がそれなりにある環境で進化してきた。ただし、その休息のあいだにも筋肉はある程度働いていた。ところが現代の都市生活で一般的な椅子に深く座る姿勢は、こうした進化的な環境とは一致していない可能性がある」とライクレンは論文に記している。
この考え方は「不活動のミスマッチ仮説」と呼ばれている。
現代の行きすぎたまでに快適な椅子やソファ、ベッドは、本来なら筋肉が支えるはずの姿勢をすべて肩代わりしている。そして筋肉は使わなければ失われるものだ。わずか10日間でも筋肉を使わないと、その力は著しく弱まり細くなる。


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