バイオメカニストのケイティ・ボーマンは、多くの現代人の身体が「閉じ込められた環境による病気」に苦しんでいると語る。
彼女は現代の人間を、飼育下のシャチにたとえる。「飼育下のシャチは、背びれが倒れてしまうことがよくあるんです」と彼女は言う。「野生では起きないことです。シャチは毎日160キロほど泳ぐことで背びれに十分な負荷がかかり、まっすぐ立つのです」
人間の身体に理想的な負荷とは、日常生活のなかで物を運び、歩き、走り、しゃがみ、掘るといった動作をすることだった。負荷が少なくなると、シャチは背びれが倒れるが、私たちの場合は動きの悪さや痛み、慢性疾患となって現れる。
人間は一日中座るようには設計されていない
そして身体の動きが悪くなるのは、結局その人自身の積み重ねだ、とボーマンは言う。
子どもたちは関節を自由に使いこなし、楽にしゃがんだり、足を前に大きく踏み出したり、頭上に物を持ち上げたりできる。だが、動きは使わなければ失われるものだ。
子どもたちはやがて学校で座って過ごすようになり、その後はデスクワークをこなす平均的なアメリカ人の一員になる。
だが、メイヨー・クリニックの研究者たちが指摘するように、「簡単に言えば、人間は一日中座るようには設計されていない」のだ。
それでも、私たちは動くことで本来の力を取り戻す。研究によれば、自然な可動域を十分に使って体を動かすと、本来は老化に対抗する役割を持ちながら休眠していた細胞が再稼働する可能性があるという。
一方で、『スポーツと運動における医学と科学』に掲載された研究によると、可動域を十分に使わずにいると、細胞が本来と異なる悪い方向へ適応し、老化を促す可能性がある。
失われた動きを取り戻すことで、閉じ込められた生活環境が生む、最も厄介な不調のひとつを改善できる、と多くの研究が示している。それはつまり腰痛である(不調はほかにもたくさんあるが)。
アメリカ人は約80%が、人生のどこかで腰痛を経験する。過去数カ月以内に腰痛を経験したと答える人は4人に1人にのぼる。
腰は痛みが最も出やすい部位であり、医師の診察を受けたり、体調不良で仕事を休んだりする理由としても最も多い。腰痛が経済に与える損失は毎年1000億ドルにのぼる。


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