僕は職業柄、プレゼンテーションをする機会が非常に多い。その中で最も衝撃を受け、今もなお参考にし続けているのが、2007年にスティーブ・ジョブズが初代アイフォーンを発表したあのプレゼンだ。
伝説のプレゼンテーション
ジョブズはこのプレゼンの冒頭で、当時の携帯電話市場を縦軸「賢さ(smart / not so smart)」、横軸「使いやすさ(easy to use / hard to use)」というマトリクスで整理した。左上には Treo、E62、Moto Qといった当時のスマートフォンが並ぶ。
確かに賢いが、複雑で使いにくい。一方、下段には従来型の携帯電話が位置づけられる。操作は簡単だが、機能が限られている。
そのうえでジョブズはこう言い切った。「私たちは、まったく新しい選択肢を提案する」
そう言って示されたのが、右上の象限。「スマートで使いやすい」という、誰も踏み込めていなかった領域に配置されたのが、アイフォーンだった。この瞬間、僕は「ポジショニングとは何か?」をこれ以上なく直感的に理解した。
アイフォーンのポジショニングは、驚くほどシンプルに、そして圧倒的な説得力をもって示されたのだ。
他との違いを明確にし、独自の立ち位置をつくること。これを「ブランドのポジショニング」と呼ぶ。言い換えれば、信頼を差別化へと変換する仕組みである。

