「自民党の経済安全保障推進本部長だった小林鷹之氏(現政務調査会長)がある会合で、中国が新造船受注量で圧倒的シェアを握り、日本のシェアはしぼんでいると説明され愕然としていた。造船復興が一気に政治課題になったのは、あの瞬間からだったと思う」
そして自民党は25年6月、造船業再興のための1兆円以上の基金創設や造船・船舶システムの共通化、地域や官民連携での造船人材育成などを盛り込んだ緊急提言を石破茂首相(当時)に提出した。
時を同じくしてトランプ政権との関税交渉の中で、日米の造船協力がテーマとして浮上する。キヤノングローバル戦略研究所の峯村健司上席研究員がその内幕を語る。
「トランプ氏の頭には『船こそパワーだ』という概念があり、トランプ政権高官は『アメリカの造船所には技術が残っていない』『日本と韓国に協力してほしい』と考えていた。こうした話を受けて、米大統領選挙終盤の時期から水面下で自民党幹部、経済産業省高官らと造船復興の話を詰めてきた」
国内建造量の倍増を目指す
そうした流れの中で前述の自民党提言がまとまり、25年10月に就任した高市早苗首相が掲げた17の重点投資分野にも「造船」が盛り込まれた。
以降の政府の動きは早かった。25年末、造船復興に向けたロードマップを策定し、自民党の提言どおり官民による基金を創設。今後10年間の国内造船所の設備投資を支援し、35年までに国内建造量の倍増を目指す。
関連して25年度補正予算で1200億円の予算を計上したほか、26年度当初予算ではGX経済移行債を活用した新燃料船の導入支援事業を新設し151億円を計上した。船主が環境配慮型の新燃料船を発注する際、従来船との価格差を実質的に支援する仕組みだ。
市場の追い風もある。10年前後の中国の経済成長期に世界で大量建造された船の更新時期が30年にかけ迫ってくるからだ。SMBC日興証券の谷中聡シニアアナリストは「世界の船主が更新投資に入っている。国家安全保障上の戦略として中国製の船を非中国製に替える動きもある」と話す。




















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