戦後になって「渡来人」の評価が一転した事情 過大評価?実にわかりにくい渡来人の実態

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(写真:sogane/PIXTA)
近年発表された古代人のDNA解析の成果により、古墳時代の人びとの25%は朝鮮半島からの移住者であることが明らかになり、歴史教科書で学んだ「渡来人」をとりまくイメージは一変しています。これは、日本の文化の成り立ちにも関わってくるトピックです。
日本史研究で多数の実績がある武光誠氏の著書『渡来人とは何者か』では、金沢大学や理化学研究所が発表した最新論文を示し、古代からの日本と大陸の関係を丁寧にひもときながら、『日本書紀』などに記された伝説的要素と史実を可能なかぎり整理し、従来「渡来人」と呼ばれた人びとや「渡来系」を自称する豪族の素性、渡来時期、ヤマト政権での足跡を明らかにしています。
古代人のDNA解析から解明された「渡来人」の正体とは何か?本当に技術者や知識人の集団だったのか? 実像と虚像がないまぜになった「渡来人」をめぐる古代史の輪郭はどのように形成されてきたのか? 書籍『渡来人とは何者か』より、鮮烈な序文から1万5000字を一挙掲載します。
前回記事:『「渡来人」は意図的につくられた概念といえるワケ

「アメリカ先住民」を何と呼ぶか

渡来系豪族を「渡来人」と総称することは、白人に征服される前のアメリカの住人を「インディアン」と呼ぶのに等しい行為であるらしい。

イギリス人などの白人が移住してくる前の北アメリカ大陸には「アメリカ先住民」と呼ばれる民族の集合体が存在していた。かれらは日本人や中国人などと同じアジア系の人種で、四万年前ごろにベーリング海峡を渡って、南北アメリカ大陸に来た人びとだといわれている。

南アメリカのアメリカ先住民は、マヤ、アステカ、インカなどの国をつくったが、北アメリカでは、国単位の先住民のまとまりは見られなかった。北アメリカの先住民は、アパッチ族、スー族などと呼ばれる、比較的大規模な部族を単位に行動していた。

集落を営んで生活する、主に血縁者から成る集団が氏族(しぞく)である。この氏族をまとめたものが、部族になる。

このような独立した部族が並び立つアメリカ先住民の社会は、チンギス・ハンの統一以前のモンゴルの部族社会に似ていた。もし有力な指導者が一人現れれば、北アメリカにアメリカ先住民の国が出現したであろう。

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