ホテル事業で260億稼ぐ「あの通販会社」の勝因 ベルーナ流「浪漫を感じるか」M&Aの舞台裏

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だが、当時ホテル経験はゼロ。「とりあえず、全従業員を派遣社員で経営してみたら、意外とうまくいったのです」と回想する。これを皮切りに赤坂、新宿と次々にオープンし、順調に経営実績を重ねていった。

その後、2013年に花巻温泉にかつてあった『幸迎館』という旅館を買収し、『優香苑』としてリニューアルしたのを皮切りに、リゾートホテルの経営もスタート。『優香苑』は買収前の売り上げが4億円弱だったところを、2倍の8億円に伸ばした。

続いて2015年、福島にあった324室の『猫魔ホテル』を取得、『裏磐梯レイクリゾート』として経営をはじめると、こちらも1年で赤字から黒字に転換。リゾートホテル経営にも手応えを感じたそうだ。こうして、都市型ホテルとリゾートホテル、両方を経営する企業になったのだ。

山の神温泉 優香苑
山の神温泉 優香苑の雪見露天風呂(写真:グランベルホテルグループ提供)

ただし、売り上げは好調でも初期投資の大きさもあり、最初はビジネスとしては成り立たなかったという。それが成長し、たしかにビジネスとして意識したのは、ここ10年の話だそうだ。そして現在では、主力事業として真っ向から取り組んでいる。

しかし、当時のベルーナの主業は通販事業。社内で反対はなかったのだろうか。尋ねてみると、「元々ベルーナはポートフォリオ経営を行っている総合商社です。複数の柱を作って経営を安定させようという方針が昔からありました。ホテル経営もその延長線上ですから、違和感はなかったと思います。ただ、当時はここまで成長すると思わず、半分道楽の意識ではじめたのですが……」と屈託のない笑顔で返された。

ベルーナ
埼玉県上尾市にあるベルーナの本社(写真:グランベルホテルグループ提供)

外国人採用200人体制で挑む人材戦略

最初の人員についてはどうしたのだろうか。「全員派遣社員で運営」と言えど、指揮する人間は必要だったはずでは? そう聞くと、最初はやはり、カタログ事業に従事する社員を本社から出向して確保したという。「本体にいるとまだまだ燃焼しきれていない、カタログ事業以外で輝けるのではないか」と感じる人を、約10人選んだと安野社長。

グランベルホテルグループ
本社のカタログ部門から出向し、ルグラン軽井沢ホテル&リゾートの総支配人を務める安東慎吉さん(写真:グランベルホテルグループ提供)

彼らは、いきなりまったく異なる仕事に変わった訳だが、「ホテルの仕事は、通販と違ってゲストの声をダイレクトに聞けるところが面白い」とやりがいを感じる人が多かったという。希望があれば戻れる環境にしていたが、実際に戻ったのは1人だけだったそうだ。そして、そこから「ホテル事業の人材」の採用をするようになった。

ちなみに今日まで、ホテル経験者の募集をしたことは一度もないそうだ。たまたま中途採用の募集に応募してきた人はいたそうだが、役職、管理職採用はゼロ。例外として、専門職である調理関係の人材は経験者を雇用しているという。

26施設を経営する現在は、毎年新卒を100人前後採用。人の入れ替わりで出向社員は減りつつあり、ほとんどがプロパーの人材だ。ただ、中核を担うホテルの総支配人は、全員が出向メンバーで構成されている。

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