仕方なくドヤ街に赴いたマサルさん。ところが、管理人と思われる人からは「あなたみたいに就労できる人が入ると、CWが訪問に来るのでほかの入居者が嫌がる」という謎の理由で入居を断られた。
一方の無低については、マサルさんは一部に生活保護費のほとんどを巻き上げるといった悪質施設があることを報道などで知っていたという。案の定、福祉事務所に現れた無低のスタッフからは「入居費5万2000円、食費など5万3000円」と説明された。これでは手元には毎月2万円ほどしか残らない。悪質貧困ビジネス業者のときの教訓から、せめて契約前に施設を見学したいと希望したが、これも内見はできないと拒まれた。
マサルさんは同席していたCWに「これじゃあ仕事なんてできない」と助けを求めたものの、視線すら合わせてくれなかったという。
一連のCWの対応には多くの問題がある。まず厚生労働省は生活保護利用の際は「必ずしも無低入居を経る必要はない」という旨の通知を出している。また、食事提供のサービスを受けるか否かを決めるのは原則利用者である。入居費はともかく食事が必要ないなら食費を払う必要はない。それに内見NGなど常識的に考えてもあり得ない。
CWは事実上、無低入居を強制している。加えて無低スタッフの不適切な説明にも見て見ぬふりをしているのだとすれば、悪質無低の片棒を担いでいると批判されても仕方ない。マサルさんの自立を助けるのではなく、阻んでいるようにしか、私にはみえないのだ。
行政はなにひとつ助けてくれなかった
マサルさんは悩んだ末に別の市民団体に助けを求めた。結局、この団体の仲介のおかげでようやく近隣の相模原市にある「普通の賃貸アパート」に引っ越すことができた。
ところが、相模原市のCWからは住民票を移すよう再三にわたって求められたという。できるだけ早く生活保護をやめて、もともと暮らしていた自治体に戻つもりだと伝えても、話は平行線のまま。手続きは郵送でも可能だが、役所間を往復する場合は3000円近い交通費がかかる。ちなみに住民票の場所に関係なく、生活保護の申請はできる。
あるときこのCWから「ご飯を1日2食にして交通費を工面できませんか」と住民票の移動を催促されたという。言葉遣いは丁寧だった。食事だって抜こうと思えば抜ける。しかし、このときマサルさんの中でふいに住まいを追われてからの不安や恐怖がよみがえった。精神的に限界だったのかもしれない。以来、不眠などの不調が続くようになり、次第に行政への憤りが募っていった。
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