有事を想定した国民保護体制には数多くの問題がある中、求められる解決策は何か。琉球大学の山本章子准教授が「非武装中立」神話から脱却した方策を提言する(本記事は後編、前編はこちら)。
2004年の国民保護法制定から国が進めてきた国民保護体制は問題が多い。テロや戦争の際に国民を守る国民保護は、国の指示・財源にもとづき都道府県を通じて市区町村が動く法定受託事務となっている。ところが、実際の運用では、基礎自治体が国民保護計画や避難実施要領パターンの策定、啓蒙活動や避難訓練、有事の避難誘導を行わなければいけない。
また、国民保護法上は一般市民にも協力を求められた場合に応じる努力義務がある。そこで前編では世界の事例を見ながら、地域住民が主体となって、軍事的脅威と自然災害どちらにも対処できる体制を築くという発想ならば今の日本にとって受け入れやすいだろうと提言した。
住民の危険が高まる避難実施要領パターン
これまで各市町村が策定した避難実施要領パターンには、大きな問題がある。総務省消防庁が公表しているパターンモデルが、汎用的な災害対策をベースにしており、有事にそぐわない内容が多分に含まれているのだ。
そもそも国民保護法からして発見者の通報義務(98条1項)を規定している。しかし、一般市民が放射性物質の拡散などを把握できるのか、あるいは爆発が武力攻撃によるものだとどう判断するのか。
また、国は自治体に避難所を多数指定させている(148条)が、沖縄県那覇市を例にとると、避難所に公園・緑地が42カ所も含まれている。弾道ミサイル攻撃を受けた場合には、衝撃波や爆風を避けるために地下に避難するのがセオリーであり、施設へのテロリストの侵入に対しては閉鎖した部屋への立てこもり、有害物質の大気中への拡散には屋外から屋内への避難が常識で、公園への避難などありえない。
その屋内だが、那覇市が避難所に指定する鉄筋コンクリート製施設75カ所のうち73カ所は、小中学・高校と公民館である。シャッターの設置がない大きなガラス窓がある建物は、爆発などから身を守るのに適さないが、上記75カ所のうち地下があるのはたった2カ所だ。
さらに、行政職員の人員が厳しく制限されている昨今、小さい市町村では防災と国民保護のどちらも、2~3人の職員しかいない危機管理系部署が担当しており、自然災害対策で手いっぱいなのが現実。国民保護までは手が回っていない。
そこで国は2024年度から、国民保護分野に精通した自治体職員の全国派遣や、避難訓練の優良事例集の作成を行う予定である。だが、地域の個別の事情を無視したマニュアルの押しつけになりはしないか。
たとえば、沖縄県宜野湾市は市役所と消防署がアメリカ海兵隊普天間飛行場に隣接しており、これらの職員の駐車場は普天間飛行場の中にある。したがって、もし同飛行場が攻撃を受けた場合には、ともに被害を受けた宜野湾市役所と消防署の行政機能が停止し、市民の避難誘導や消火・救援活動を行えなくなる可能性が高い。
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