また、普天間飛行場は国道58号線と国道330号線に挟まれており、同飛行場が攻撃されれば2つの国道も破損、寸断される可能性が非常に高い。これらの国道が使用できなくなれば、宜野湾市民の移動は事実上不可能になる。しかし、現状の宜野湾市の避難実施要領パターンは国のモデルにしたがっているため、こうした想定がなされていない。
このように地域の特性をふまえない国民保護計画のマニュアル化は、住民をかえって危険にさらすことになりかねない。
島外避難が不可能な沖縄
最大の問題は、国が自治体に住民の避難指示を出すのは、日本の国土が攻撃を受ける可能性が差し迫った武力攻撃予測事態からだが、これは自衛隊の防衛出動が可能になるタイミングと同時だということだ。つまり、沖縄県の場合には住民の島外避難は事実上不可能となる。どういうことか説明しよう。
現在、沖縄に配備された自衛隊は1個連隊規模にすぎず(2個連隊規模に拡大して、師団クラス〔本来は3個連隊規模〕に格上げする構想があるが、実現時期は未定)、南西地域で有事が起きた場合、本土から応援部隊が沖縄に増派されることが作戦上不可欠となる。そのため、2022年末に岸田文雄政権が閣議決定した安全保障関連3文書は、自衛隊が平時の訓練から民間空港・港を利用できるよう、法整備や施設改修を目指している。現状の沖縄の自衛隊施設だけでは、増派部隊の移動拠点が全然足りないのだ。
しかし、国際法上は軍民分離の原則があり、自衛隊が人員や装備の輸送で使用する民間空港・港は軍事拠点とみなされ、敵の攻撃対象となる。自衛隊と使用する滑走路・船着場や時間帯を分ければ、民間航空機・船舶が一緒に利用することは不可能ではないが、短期間の大規模な住民の移動は難しくなる。自衛隊にとっても同様だ。
また、一部の自治体や経済団体が要請しているように、増派部隊を沖縄まで移送するのに用いた自衛隊機・艦船や海上保安庁の船舶を、今度は沖縄から九州まで住民を移送するのに使うという方法もあるが、これも実現可能性は低い。自衛隊機・艦船が敵の攻撃を受けずに民間人を移送するためには、国際法で定められた特殊標章(オレンジ色地に青の正三角形)を掲げることになっているが、これを掲げた機体・艦船は戦闘に使えなくなる。ただでさえ輸送手段が不足している自衛隊にとって痛い損失だ。
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