教員採用試験「早期化・複数回実施」でも、志願者は増えないこれだけの理由 「授業をする先生の不安そうな表情」を見て断念

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公立学校教員採用試験の倍率は、全国的に低下傾向にある。そこで文部科学省は今年5月、就職活動の早期化に伴って教員採用試験を1カ月程度前倒しして6月に実施することや、複数回実施することなどについて方向性を提示した。現状も6月に実施している自治体はあるが、はたして前倒しすることで志願者は増えるのか。企業と併願する学生は増えるのか。フリージャーナリストの前屋毅氏が、教育学部の卒業生に取材した。

意外に知られていないのが、「教員採用試験合格辞退者」の存在ではないだろうか。教員不足が叫ばれる中で、せっかく教員採用試験に合格しても辞退している人が少なからずいる。それが、教員不足に拍車をかけてもいる。

文部科学省が都道府県や政令指定都市など全国68の教育委員会を対象に今年4月に行ったアンケート調査では、小・中学校や高等学校、特別支援学校での教員不足が「1年前より悪化した」との答えが全体の43%を占めた。教員不足といわれる状況は、改善しないどころか、悪化する一方のようだ。

「教員不足の状況」68教育委員会へのアンケート調査
「悪化した」43%(29自治体)
「同程度」41%(28自治体)
「改善した」16%(11自治体)
出所:文科省「『教師不足』への対応等について(アンケート結果の共有と留意点)」

 

そうした中で講師(臨時採用)探しの負担が、校長や教頭に重くのしかかっている。あちこちに連絡を取り、高齢の定年退職者まで引き戻している例も珍しくない。それでも教員不足は解消されず、「もう手がない」と嘆いている校長や教頭も多い。

教採倍率は高いのに採用予定数を割り込む高知県

今年3月には、高知県の長岡幹康教育長ら教育委員会職員12人が街頭に立って教員確保を呼びかけて話題になった。そんなことで教員が集まるはずがないと思ってしまうが、そこまでしなければならないほど教員不足は深刻になってきているということだ。

しかし、高知県の教員採用試験(以下、教採)の受験者が少ないわけではない。2022年に実施された23年度教採における競争倍率は、例えば小学校では6.7倍(時事通信社調査)だった。全国平均が2.0倍なので、かなり高い競争率で、受験者は多かったことになる。

ところが、実際に教員になった人数は少ない。23年度の高知県の小学校教諭の採用予定数は130人程度だったが、実際の採用人数は94人でしかなかった。受験者数は多いが、教員になった数は極端に少ないわけだ。だからこそ、教育長自らが街頭に立たなければならない事態になったといえる。

その理由を高知県教育委員会教職員・福利課の担当者は、「教採に合格しても辞退者が多いためです」と話す。高知県では、この状況が23年度だけではなく、ここ数年続いている。

辞退者の多い理由を聞くと、「他県に比べて教採実施日が早かったことと高知県内だけでなく大阪にも試験会場を設けていることで『併願』がしやすくなっているからだと考えられます」との返事が戻ってきた。

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