南極に行った美術教諭が語る「教室を飛び出す学び」と「柔軟な働き方」の重要性 話題の「神山まるごと高専」で新たな挑戦開始

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
近年、ビジネス界ではアートの力が注目され、文部科学省も「Art」を含むSTEAM教育を推進しているが、学校現場において芸術科目はあまり重要視されていない。一方、以前から美術の授業にICTを取り入れ「教室を飛び出す学び」を実践しているのが、新井啓太氏だ。南極からライブ授業をするなど、自らも教室の外に飛び出し学び続け、2023年4月からは神山まるごと高等専門学校(以下、神山まるごと高専)で新たな挑戦を始めている。そんな新井氏に、ICTや美術教育の可能性、そして外とつながり柔軟に働くことの意義について語ってもらった。

「美術は美術室で学ぶもの」という枠組みを崩したかった

ICTを積極的に活用して新しい美術の実践に挑み続ける、教員歴17年の新井啓太氏。しかし自身について、「もともとはものすごくアナログな人間」だと話す。

「大学時代は油絵を専攻し、言葉やインスタレーションなど手法は問わず、表現そのものを探究する場で学んでいました。だから教員になった当初から、絵の具や言葉、自然など『多様な表現の材料』を扱いたいと思いましたし、他教科とも結び付けるなど『多様な学び方』も意識していました。中高生の頃、学校で一斉に同じことをやることへの違和感や、面白いことは学校外にあるという実感を抱いていたのですが、そんな原体験も大きく、『美術は美術室で学ぶもの』という既存の枠組みを崩す方法を模索していました」

新井啓太(あらい・けいた)
神山まるごと高等専門学校 デザイン教員スタッフ/学生募集チーム
福岡県生まれ、神奈川県育ち。東京藝術大学絵画科油画専攻卒業。相模女子大学中学部・高等部では美術教諭を務めるとともにメディア情報部主任を担当、第60次南極地域観測隊夏隊同行者(教員南極派遣プログラム)としても活動。2022年にドルトン東京学園中等部・高等部で美術科主任を務め、23年4月より現職。ドルトン東京学園中等部・高等部STEAMアドバイザー、どこがく取締役、Adobe Education Leader、Google for Education認定イノベーター

その中で掲げたキーワードが、「教室を飛び出す学び」だ。まずはテーマだけ決め、校内の好きな場所でスケッチしてよいことにした。当初は「さぼってしまうのでは」という声もあったが、生徒が自然体で話をしてくれるようになり、表現も伸びやかになって作品のクオリティーがさらに上がったという。このとき、「ICTを活用すれば、活動場所や表現をもっと広げられるのではないかと考えました」と、新井氏は言う。

そこで新井氏は2016年、在籍していた相模女子大学中学部・高等部のメディア情報部主任となると、ビデオ会議システムを利用して、屋外で制作を行う生徒たちがつながる授業や、外部講師による遠隔授業などを実施。「生徒のサンドパフォーマンスをライブで見せるといったメディアアートのまね事や、Google Classroomを使った学びの蓄積なども始めました」と、新井氏は説明する。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事