三者面談を秘密録音? 難しくなる一方の保護者対応トラブルに直面する学校 保護者の知識と行動力が「教師を上回る」時代に

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教員はつねに多くのタスクを抱えている。そうした中で突然降りかかってくるのが保護者対応だ。近年では、保護者のクレームが訴訟に発展するケースも少なくない。「保護者対応トラブル」の解決にあたり、教員にはどのようなスキルが求められるのか。法の知識を身につけた保護者の実態と、法化社会を生きる現代の教員のあり方について、大阪大学名誉教授 小野田正利氏に聞いた。

秘密録音は普通になった

小野田正利(おのだ・まさとし)
大阪大学名誉教授
教育学博士
著書に『「迷惑施設」としての学校―近隣トラブル解決の処方箋』(時事通信社)、『イチャモン研究会―学校と保護者のいい関係づくりへ』(ミネルヴァ書房)などがある
(写真は本人提供)

今や通話内容が録音されるのは当たり前で、時に子どもがICレコーダーを身に着けて登校し、毎日の授業の様子を「秘密録音」することが、ぽつぽつと全国各地で起きています。それどころか、スクールカウンセラーとの面談も、弁護士との相談内容も同様に録音されています。その目的は、単に後で反すうするためもあるでしょうが、子どもへのいじめやからかい、あるいは不適切な指導の証拠集めという側面が大きいと思います。

タブレットやスマートフォンで人の顔を撮ることは、肖像権やプライバシー侵害に当たる可能性がありますが、本人が会話に参加する場合は、相手の承諾なく録音する行為は違法ではありません。もちろん、内容を不適切に第三者に漏らした場合は問題になりますが、録ること自体は合法です。

例えばこんなことがありました。学校に三者面談にやって来たのは母親でしたが「すいません、夫が発言したいと言っています」と言われて、担任は「?」となります。取り出されたのはスマートフォンで、画面越しに父親が語りかけ始めました。実は最初からずっとつながっていて、四者面談として再開されました。IT機器の急速な発達と高機能化によって、驚くべき光景を生み出しています。

「要望」から「苦情」そして「無理難題」

子どもを真ん中に置いて、共にその成長を喜び合える存在が保護者と教師です。しかし時に、両者の間に良好な関係づくりが維持されず、保護者からの学校や教師に対するクレーム・苦情が頻発し、それらの一部はエスカレートして紛争化し訴訟に発展するなど、いわゆる「保護者対応トラブル」が極めて深刻な事態となっています。教育活動に支障が出るだけでなく、収束が見通せない悩みを抱え込むことで、教師のメンタルヘルスにも大きな影響を及ぼしています。

学校に対して過度の要求を出す保護者を「モンスターペアレント」と呼ぶことがありますが、これは誤用であり蔑称です。米国では虐待を受けている子どもがその親を見て「怪物のように見える」ことから使われてきたもので、正しくは、わが子の上空を旋回しながら、事あるごとに急降下してきて教師にクレームを申し立てるとして「ヘリコプターペアレント」と称されています。

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