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賃上げ機運に吹く2つの逆風 すでに自動車産業が減産

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  • 太田 聰一 慶応義塾大学経済学部教授
慶応義塾大学経済学部教授 太田聰一(おおた・そういち)1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

日本では、ワクチン接種が進むにつれ、新型コロナウイルスの感染状況は落ち着きを見せてきた。経済の回復は欧米に後れているものの、ようやく本格的に人の流れを増やして個人消費を回復させる条件が整いつつある。

幸いなことに東証1部上場企業の直近の中間決算では、好調な海外需要を背景に、営業利益の合計がコロナ前の水準を上回っていると報じられている。個人消費の原資である賃金の上昇にも期待がかかるところだ。

ただ、今後賃金アップの機運が盛り上がるかどうかについては、2つの懸念材料がある。1つは東南アジアでのコロナ感染拡大に伴う部品供給などの混乱、もう1つは原材料価格の急上昇だ。前者が要因となって、すでに自動車産業が減産に追い込まれている。雇用の裾野が広く、春闘での影響力も強い産業だけに賃上げにとって逆風になりかねない。

さらに深刻だと思われるのは、原材料価格の影響だ。世界的な景気回復を背景に高騰しているが、それに伴って企業間の取引の物価指数である企業物価指数が急激に上昇している。今年10月の速報値は、前年同月比8%という近年にない伸びを記録した。今年4月あたりから指数は伸び続けている。

一方で、消費者が購入する商品やサービスの価格を表す消費者物価指数(コア指数)は9月に至っても前年同月比0.1%しか上昇していない。つまり、企業は原材料費の上昇を製品・サービス価格に上乗せできていない。10月に同4%の消費者物価指数の伸びを示した米国とは対照的だ。

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