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中国のイノベーション創出力の行方 規制は「両利きの経営」にどう影響するか

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  • 井上 達彦 早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学商学学術院教授 井上 達彦(いのうえ・たつひこ)1968年生まれ、兵庫県出身。97年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士(経営学)。早稲田大学商学部助教授などを経て2008年から現職。著書に『ゼロからつくるビジネスモデル』『模倣の経営学』『世界最速ビジネスモデル 中国スタートアップ図鑑』(共著)など。(撮影:梅谷秀司)

規制によって中国の巨大企業のイノベーション創出力の行方が話題になっている。習近平率いる政府が何を考えているのか。その真意を知ることはできないが、イノベーション研究の視点から推察することはできる。

イノベーションでおなじみなのが「両利きの経営」。未知の知識の追求をする「知の探索」と既知の知識の活用や開発を行う「知の深化」が車の両輪となってイノベーションを持続させるという話だ。

しかし、「知の探索」と「知の深化」のバランスの取り方が難しい。組織の資源は限られているので、一方を追求すると他方が犠牲になりやすいからだ。

筆者らは、アリババとテンセントは別々の方法で「両利きの経営」を実現したと考えている(『世界最速ビジネスモデル 中国スタートアップ図鑑』日経BP社)。

アリババは、探索を担うセクターと深化を担うセクターを役割分担させることでバランスを取ってきた。決済、クラウド、物流などの経済インフラに関わるイノベーションを次々に引き起こすことができたのは、さまざまな領域で得た知識をすべてeコマース事業に結合し、投資を回収できたからだ。知の探索に集中するセクターと知の深化に集中するセクターを分けることでトレードオフを解消したのだ。「組織的分離」である。

これに対してテンセントは、探索で開発に集中する期間と深化で利益を上げる期間を分けることで、トレードオフを解消した。1999年には探索によってインスタントメッセンジャーのQQを開発、その後は関連サービスの深化によって収益を伸ばした。そしてPCからモバイルへの転換が進んだ2011年には、同じく探索によってWeChatを開発、その後、関連サービスの深化によって収益を伸ばした。「時間的な分離」によってバランスを取ったのである。

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