国内外で深刻なコロナ禍が続く中、今夏の東京五輪開催の是非をめぐる議論が高まってきた。最近の各種世論調査をみると、日本国民の大多数は五輪の中止、ないし再延期を望んでいるようだ。一方、政府と東京都は今年7月に何としても五輪を開催するとの姿勢を崩していない。以下では、五輪開催の是非に関する経済的・政治的な損得勘定をしてみよう。
一部には、東京五輪の開催を中止すると経済的損失は数兆円規模に上る、との見方もあるようだ。4年前に東京都は「五輪の経済効果は直接効果だけで5兆円超になる」としていたから、こうした試算も不思議ではないと感じるかもしれない。しかし経済学的には、これは明らかに誤りである。
というのも、五輪のための競技施設の建設にしても交通インフラの整備にしても、もうとっくに終了している。これらはサンクコスト(埋没費用)だから、五輪を中止しても戻ってこない一方、この間に発生した経済効果が消えてなくなるわけでもない。実際、2018年10月まで続いたアベノミクス景気拡大の一部は、五輪開催に向けての建設投資が支えていたとみられている。五輪の経済的損得を考えるうえでは、実際に開催することで今後追加的に発生するコストとメリットを比較する必要がある。
その際、極めて重要となるのは、どのような規模で五輪を開催できるかである。もし仮に、世界中からアスリートも観客も集めて、五輪の「完全な形での開催」が可能ならば、そのメリットは極めて大きいに違いない。この夏の東京は内外の観光客でにぎわうだろうし、海外から訪れた人々は地方都市にも赴く可能性が高い。来年以降のインバウンド観光へのレガシー効果も大いに期待できる。
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