デジタル化の進展によって経済はあらゆる面で大きく変化している。2018年4月7日号の本欄ではデジタル化のGDP(国内総生産)や経済厚生への影響を取り上げたが、今回は価格形成や物価への影響を考えてみたい。
デジタル化の物価への影響でよく議論されるのは、インターネット消費の拡大で物価が上がりにくくなるという「アマゾン効果」だ。だが、これは計測できるし、物価統計への取り込みも難しくない。ここで問題になるのは、フィリップス曲線の傾きといったインフレ動学の変化であり、価格の概念自体が変わるわけではない。
もう少し難しいのは、時々刻々と価格が変わるダイナミックプライシングの普及だろう。今では航空券やホテルの予約はダイナミックプライシングが当たり前だが、最近は家電量販店やデパートにも広がりつつある。需給のマッチングという観点からは、これは大きな進歩といえる。
しかしダイナミックプライシングでは、どうしても欲しい人には高値で売り、ほかの人には安売りで応じることが可能になる。つまり一物一価の前提が崩れてしまうのだ。そう考えると、通常月次で作成される物価統計の頻度を上げれば済むという問題ではない。
さらに本質的な問題を投げかけるのは、「同じモノを2つ買えば値段は2倍」という前提が崩れる非線形価格だろう。携帯電話料金は極めて複雑な非線形価格になっており、最近の日本では何を買ってもポイントがつくようになったが、これも非線形価格の一種だ。
これが可能になったのは、デジタル技術で個々の消費者ごとに購入記録を管理できるようになったからだ。今や消費者により価格が違う一物多価が普通になり、今日のモノの値段はその人の過去の消費履歴次第になった。こうなると価格の意味が変わってしまうため、物価指数だけでなく、価格メカニズムの分析というミクロ経済学の基礎までが揺らぐことになる。
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