私は大学の学部、大学院で長い間「経済政策論」を講じてきた。自分自身が政策の現場にいた経験を踏まえて、理論的な枠組みを維持しつつ、できるだけ最新の情報を盛り込んで、現実に展開されつつある政策を解説する。
ところがこのところ、この経済政策論の講義で説明に窮して困惑する場面が増えてきている。まず金融政策だ。これについては、日本銀行の独立性と金融政策決定会合による政策決定の仕組みを述べたうえで、短期金利を中心にした金融政策の運営手法を説明する。
ところが現実の政策は非伝統的な量的緩和に進んだ。そこで「ゼロ金利でもデフレから脱却できなかったので異例の量的緩和に進んでいった」と解説する。すると「効果はあったのか」と質問される。これには「ほとんどなかった」と答えるしかない。すると「効果がなかったのになぜいつまでも続けるのか。政策決定会合には金融政策の専門家が集まっているのではないのか」と聞かれ、また窮する。
マイナス金利については「ゼロまで下げても効果が足りないからマイナスだ」と説明するが「金利はゼロ制約下にあるはずではないのか。お金を預けると減り、借りると増えることが存在しうるのか」と聞かれて、これも説明に窮する。
イールドカーブ・コントロールはさらに説明が難しい。「短期から長期までの金利全体を政策的にコントロールするのだ」と説明すると、「短期金利は制御できるが、長期金利は景気の先行き、物価予想などの作用する余地が大きく、政策的にはコントロールできないはずだったではないか。長期金利には多くの経済主体の認識が反映されるのだから、これを無理にコントロールすると、こうした情報が得られなくなるのではないか」と問われ、さらに答えに窮する。
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