モノからコトへといわれて久しい。モノより経験価値に焦点を合わせた「デザイン思考」が世界で注目されて20年近く経つ。導入が遅れた日本では一昨年、経済産業省が「デザイン経営」の推進を掲げた。企業は機能的価値以上に、使いやすさやデザインなどの意味的価値の重視を唱えている。
しかし実際には、日本企業の経営も商品もあまり変わっていない。例えば電子レンジは、膨大な種類の料理が可能でも、マニュアルをじっくり見ないと使えない。量販店に並ぶ冷蔵庫や洗濯機は、デザイン重視のはずだが、少し離れるとメーカーの違いもわからない。
日本企業は数字や仕様で表せない意味的価値の創出が苦手だ。重量半減化など具体的な目標を組織一丸となって達成する力は世界一だ。しかし、英ダイソンの掃除機や米アップルのiPhoneの人気の源泉は、商品スペックを超えて顧客に伝わる魅力や意味である。
日本企業がデザイン思考になじめないのは、それが技術やものづくりを軽視していると思うからだろう。実際には意味的価値には高度な技術が求められる。
あまり話題にされないが、アップルの設備投資は毎年1兆円を大きく超える。高度なアルミの切削技術やガラスの加工技術などの開発に力を入れ、製造機器に投資をする。それを製造外注先に貸し出し、すばらしい使い心地やデザインを実現してきた。そこでは、ファナックの切削加工機など日本の技術が多用されているのも皮肉だ。
このように高度な技術と意味的価値の融合を考える枠組みとして、筆者はSEDAモデルを提言してきた。機能を目指す科学(Science)と工学(Engineering)、意味を付加するデザイン(Design)とアート(Art)の頭文字だ。SEDAの統合的価値が求められるが、ここでは次の2点を強調したい。
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