橘木俊詔氏(京都女子大学客員教授)が新著『日本の経済学史』で強調したように、日本にとって経済学は輸入学問だった。そして現在も、経済学界の中枢を担う人の多くは米国の博士号(Ph.D.)の取得者だ。経済学での米国の圧倒的地位を思えば当然ではあるが、日本経済に関する議論まで米国の経験に過度に影響されてしまう懸念も否定できない。
その問題が最も顕著に表れるのがマクロ経済政策をめぐる議論ではないか。日本では、バブル崩壊に伴う金融機能の不全が長引いたうえ、短期金利も25年近く前からゼロに近づき、金融政策の限界が強く意識されていた。しかし、米国では、マエストロと呼ばれたグリーンスパンFRB(連邦準備制度理事会)議長時代の成功体験から、長い間金融政策万能論がマクロ経済学界を覆ってきた。
このため、日本経済の長期低迷やデフレからの脱却についても、大胆な金融緩和が重要だとの提言が米国の学者から繰り返された。実際には、ゼロ金利もフォワードガイダンスも量的緩和も、すべて日銀が世界で最初に実行してきたにもかかわらず、だ。「バブル崩壊後のバランスシート不況では金融政策の効果は減殺される」という、今思えばリーマン後の米国経済を予言するようなリチャード・クー氏(野村総合研究所チーフエコノミスト)の見解も無視された。
こうした米国経済学の後押しを受けたリフレ派の主張を安倍晋三首相が受け入れることで実行されたのが、日銀による「異次元緩和」だった。その効果が皆無とは思わないが、驚異的なマネタリーベース増加にもかかわらず2%の物価目標に届くことはなく、結果的に金融政策万能論の誤りを証明した。
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