今年5月の労働施策総合推進法の改正によって、パワーハラスメント(パワハラ)対策の法制化が行われ、職場におけるパワハラ防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが企業の義務となった。
パワハラ問題は深刻化しつつある。厚生労働省が設置する総合労働相談コーナーにおける相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」によるものは年々増加傾向にあり、昨年度は全体の相談件数の約3割を占めた。厚労省による実態調査もかなり衝撃的である。2016年の調査では、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した従業員は33%に達し、その4年前の調査に比べて7%ポイントも増えた。
理不尽なパワハラは被害者の心身状態の悪化、仕事の意欲低下を招くだけでなく、企業にとっても離職者や休職者の増大などによる大きなロスを発生させる。このことは今では広く理解されるようになっており、企業も従業員向け相談窓口を設置するなどの対応を行ってきたが、さらなる対策強化のため、今回の法改正に至った。
しかし、法律の制定だけでは十分とはいえない。第1に、何がパワハラであるかについて社会全体での合意形成が必要だ。厚労省は最近、職場での発言や振る舞いがパワハラに相当するかどうかを判断するための「指針案」を示したが、新聞報道によると、「パワハラとして認める範囲が狭い」という批判がくすぶる。
何をパワハラとして認めるかについては曖昧な部分が残らざるをえない。例えば、上司が部下の仕事ぶりを叱責した場合、それがパワハラの要件である「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」であるかは、社会通念に照らして判定する必要があり、どうしてもグレーゾーンが残る。パワハラを狭く解釈すると労働者が救済されにくくなる一方で、広く解釈すると適切な指導すらなされなくなる、あるいは職場でのコミュニケーションがとりにくくなるというリスクが生じる。このバランスをとる社会通念が確立されるには、労使が相当の時間をかけてすり合わせを行っていく必要があるだろう。
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