マーケティング用語や広告用語には一般化しているものも多い。ターゲット、ブランディング、ポジショニングなどの言葉は日常会話でも使われる。抽象的な概念だが、具体例が身近にたくさんあって理解しやすいからだろう。
一方でマーケティング・広告関係者にもよく知られていない概念がある。「セイリエンス(salience)」もその1つだ。うまく実践している具体例は極端に少ない。しかし、そんな数少ない例は、ブランディングの大きな成功例でもある。
Just do it.やi'm lovin' itといったスローガンの「意味」を正確に理解している人はどれくらいいるだろう。それでもこれらはマーケティングとして機能している。その秘密はセイリエンスにある。
この言葉自体は決して新しくはない。1980年代の論文にはすでに登場しているようだ。ジェニ・ロウマニアックとバイロン・シャープは“Conceptualizing and measuring brand salience"という2004年の論文で、この「セイリエンス」を掘り下げている。セイリエンスとは、実際の購入場面で顧客がそのブランドを思い起こす度合いだ。昼食を食べようと思う。マクドナルドがすぐに頭に思い浮かぶ。この場合、マクドナルドのセイリエンスは強いといえる。
「想起」との違いは「実際の購入場面で」という点だ。通常、ブランドの想起はアンケート調査で測られ、「ファストフードといえば」などという想起のキュー(合図)は、調査者によって1つだけ設定される。しかし、実際の購入場面ではキューは1つだけではない。「500円で食べられるランチは」「30分で片付く軽食は」「子どもも大人も満足できる朝食は」「駅前で2時間仕事ができる場所は」などさまざまだ。そうしたキューに対応して、ブランドを思い起こしてもらうにはどうしたらいいか。
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