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キャリア・教育 #マーケティング神話の崩壊

出発は「実在する1人の真実」 人の心を動かす「ビッグアイデア」が生まれる場所

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米国の国民的作家、アーネスト・ヘミングウェイは元新聞記者だった。それを踏まえると興味深い創作の秘訣が、パリ時代の回想録『移動祝祭日』で語られている。新しい小説をなかなかうまく書き始められないとき、ヘミングウェイは自分にこう言い聞かせる。「真実の一文から始めろ」。自分で見たり聞いたりした、あるいは誰かが言っているのを聞いた真実を拠り所にする。フィクションも、その出発点は「実在する1人の真実」であるべきだ、と。

広告制作の世界でも実は同じことがいえる。グローバルにビジネスを展開する消費財メーカーは、マーケティング調査を駆使し、「定量データ」を基に意思決定をするイメージが強いだろう。実際そのとおりだが、同時に「実在する1人の真実」も大事にしている。ここで重視されるのは、アンケートの自由記入欄のようないわゆる「定性データ」よりも、もっと踏み込んだ消費者一個人への洞察だ。

対象の顧客層の人たちを集め、シャンプーなど特定のカテゴリーについて思うところを語ってもらう調査をフォーカスグループ・インタビューという。一人ひとりからじっくりと話を聞く手法がデプスインタビュー。さらに、このデプスインタビューを、消費者宅で行うこともある。よそ行きの顔のインタビューでは、「実在する1人の真実」には迫れないのだ。

こうした深い対話から、商品や広告表現のアイデアが生まれる。デプスインタビューの歴史は古く、1940年代にまでさかのぼれる。「アイボリーはすべてを洗い流す」というせっけんの広告コピーは、入浴は汚れと穢(けが)れを洗い流す儀式である、というデプスインタビューでの発見から生まれたという(Morton Hunt 『The Story of Psychology』参照)。インタビューで得られたアイデアは仮説だ。後にアンケート調査などで定量的に検証される。しかし、あくまで出発点はその仮説。そしてそれは「実在する1人の真実」から生まれる。

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