世界で最も権威のある広告賞である「カンヌライオンズ」。2019年のグランプリの1つに選ばれたのは、米ナイキのプロモーション映像だった。
「Dream Crazy」と題されたその映像には、周りから「ばかげている」と揶揄された夢を諦めず実現してきたヒーローたちが紹介されている。難民として生まれながら、16歳で国の代表チームに入ったサッカー選手、子供の頃に片手を失いながら、米NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)との契約に成功したアメフト選手……。そして、ナレーターはこう語りかける。「信じ続けろ。すべてを犠牲にしても」。
映像の途中で、ナレーターは元NFL選手のコリン・キャパニックであると判明する。サンフランシスコ49ersのクオーターバックだった彼は、16年の試合で国歌斉唱時の起立を拒み、当時のバラク・オバマ大統領も巻き込むような論争の主人公になった。
14年、ミズーリ州ファーガソンでアフリカ系米国人が白人警官に射殺された。「ファーガソン事件」はアフリカ系米国人への差別の撤廃を訴える全米、世界規模の「ブラック・ライブズ・マター」運動に発展する。その熱がじわじわと広がり始めたときに起きたのがこの論争だった。
トランプ氏が批判
国歌や国旗に対して敬意を表さない、というのは米国人の国民感情を刺激する。戦争で国旗を掲げて戦い、犠牲になった兵士たちへの冒涜だと考える人が多いためである。キャパニックも、起立はしなくてもひざをつきはするという行動を取った。退役軍人でもあったチームメートにアドバイスを仰ぎ、軍人たちへの侮辱と取られないよう配慮したのだ。
この記事は有料会員限定です
残り 641文字
