ICT(情報通信技術)の発展は、人々の生活とメディアとの関係を劇的に変えた。興味深いのは、画像データや音声データ、動画データの品質は、むしろ以前よりも劣化したことである。
例えば画像データのフォーマットとして一般的なJPEGは、人間の目で見て大きく画質が変わらないくらいに画像を圧縮する規格だ。インターネットでの通信負荷を軽くするために開発された。
映画やテレビなど、連続性を持って発展してきたメディアにおいて、技術の発展は画質の向上を意味した。だが、伝統的なメディアからネットメディアへの進化は急速で、しかも非連続なものだ。視聴者はネットが持つ新しい価値と引き換えに、低い画質を受け入れる。それに慣れてしまうと、無駄に高画質で、読み込みに時間もデータ容量もかさむコンテンツを毛嫌いするようになった。
低予算映画が大ヒット
低画質への受容性は、コンテンツのあり方を変える。映画『カメラを止めるな!』のヒットは象徴的な現象である。映画という高画質を競うジャンルにおいて、低画質で破格に安い予算で作られた作品が受け入れられた。YouTuber(ユーチューバー)が生まれたのも、編集ソフトの低価格化に加え、視聴者が低画質を受け入れるようになったためだ。
ただ、現代の視聴者は画質には寛容になったが、別の側面では不寛容になった。例えばネットの炎上騒ぎ。明らかに悪意を持った行為や違法行為をした企業、個人に社会的な批判が集まるのは当然だが、今の時代は違法とも、悪意があるともいえないような行為に対しても炎上騒ぎとなる。
その火の粉は、企業広告にも及ぶ。キリンビバレッジは「午後の紅茶」の広告活動として、「午後ティー女子」というソーシャルメディア用のコンテンツを作成したが、コンテンツ公開直後から批判が殺到する事態となった。
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