英国のEU(欧州連合)離脱の期限(3月29日)が迫ってきた。昨年11月にEUとの合意案が公表されたが、それを基とした政府案は、1月の国会で大差で否決された。政府にとっては大惨敗である。
その後、修正案が下院で審議にかけられ、北アイルランドの国境をめぐる現状の合意案(物理的国境は作らない、北アイルランドはEUの関税同盟にとどまるなど)を修正すること、「合意なきEU離脱」は行わないことといった国会決議が行われた。ただし、この修正案は政府を拘束しない。
メイ英首相は、その後ブリュッセルを訪問し、合意案の再修正の交渉を始めたが、EU側の態度は簡単に軟化しそうにない。このままでは合意なき離脱が現実になる。
現地では、高まるリスクを受け、すでにいくつかの大企業が合意なき離脱を前提とした行動を始めたと報じられている。大陸欧州への拠点の移転や雇用縮小などを決めた企業が現れるたびにニュースとなる。合意なき離脱の英国経済に与えるダメージが大きいことは、誰の目にも明らかだ。
にもかかわらず、現地に住む私がどうしても理解できないのは、なぜ、国会で、2度目の国民投票をしてEU離脱の是非をもう一度国民に問おうという労働党の修正案が否決されたり、離脱を一時棚上げする案が否決されたりするのかである。経済へのダメージが国民の目にもこれだけはっきりしているのなら、再度国民投票をすれば、EU離脱という1回目の投票結果は覆るのではないかと思えたからだ。
この「なぜ」に答えたのが、1月21日の首相演説であった。「2度目の国民投票は、われわれが国民投票をいかに取り扱っていくかということに対し、困難な前例を作り出してしまう。そればかりでなく、連合王国の統合をバラバラにしようとする政治勢力に手を貸すことになってしまう」というのだ。カギとなるのは、「困難な前例」を作ることへの懸念である。
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