周知のように、安倍晋三政権が当初掲げた経済政策上の最大テーマは、デフレ脱却だった。これは、金融緩和で物価さえ上がれば、需要不足による経済の低迷や税収伸び悩みによる財政悪化といった日本経済の宿年の課題が一気に解決するという「リフレ派」の主張に支えられたものだ。
だが、過去6年間のアベノミクスの経験から、金融緩和だけではなかなか物価は上がらないばかりか、賃金上昇なしに物価だけ上がれば個人消費にマイナスに働くとの認識も広がってきた。
このため、安倍政権が最近打ち出した政策を見ると、幼児教育の無償化にしても、菅義偉官房長官が主導する携帯電話料金引き下げにしても、むしろ物価を押し下げようとするものが目立つ。キャッシュレス決済に5%のポイント還元を行う案も、物価を下げることで消費増税に伴う負担を軽減しようとするものだし、外国人労働者の受け入れ拡大も、賃金の上昇を抑制することで結果的に物価上昇を遅らせることになる。
昨年12月時点の消費者物価(生鮮食品を除く)の前年比はプラス0.7%だったが、これには昨秋までの原油価格上昇が影響しており、エネルギーも除いた前年比はわずか同0.3%だった。
今後は原油安の影響で物価上昇率は低下していくと予想されるが、これに上記の幼児教育無償化や携帯電話料金引き下げが加われば、消費増税の影響を除いた消費者物価の前年比が今年中にマイナスになることも十分に考えられる。
はしごを外された格好のリフレ派から、今のところ表立ったアベノミクス批判は聞こえてこない。それでも、外国人労働者受け入れ拡大には反対意見が多いようだ。「賃金・物価が上がらないのは失業率の低下がまだ不十分だから」というのが彼らの立場だからスジを通す姿勢といえよう。しばらく様子を見て、消費増税後に景気が悪化すれば、再度強硬なリフレ策を主張する構えなのかもしれない。
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