欧州の政治、経済、文化に大きな影響力を持つフランスの思想家、ジャック・アタリ氏。同氏は近著『海の歴史』(プレジデント社刊)の中で、「海を破壊し始めた人類は、海によって滅びるだろう」と警鐘を鳴らす。海洋汚染問題へ日本はどう対応するべきか、寄稿してもらった。
海は、人間が必要とするすべての飲料水と酸素の半分、そして人間が摂取する動物性タンパク質の5分の1を供給する。気候を制御するのも海だ。海がなければ、気温は少なくとも35度は上昇するだろう。海には鉱物やエネルギーなどあらゆる資源が手つかずの状態で眠る。また、海はモノとデータの輸送だけでなくイノベーションや創造性が生み出される場でもある。
ところが海の状態はますます悪くなっている。現代人の行動は、環境に配慮しなかった5万年前の狩猟採集民族よりも劣悪である。われわれ人類は漁業資源を破壊し、海にはプラスチックなどのゴミを垂れ流している。これらのゴミは急速なペースで海に堆積している。そして地球温暖化が原因で海水の温度と海面水位は上昇している。海中の酸素は減り、生物種は危機に瀕している。人類は海を破壊する前に自分たち自身を破滅させてしまうだろう。
では、海を救うにはどうしたらよいのか。現在の生産方式、消費形態、生活様式、社会構造を根本的に見直さなければならないだろう。各自の可能な範囲で、自然を破壊するおそれのある原料が利用されている製品は買わないなど、日常生活を見直すべきだ。企業は一貫したエコ概念を持って、自分たちが生み出すゴミがリサイクルされることを前提にした生産活動に従事し、プラスチックの利用を減らす必要がある。新たな法令の施行や行政指導があるのを待っているようではいけない。
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