現在の景気に関する最大のパズル(難問)が「人手不足なのに賃金が上がらない」点にあるのは衆目の一致するところだろう。この点、従来筆者は長期雇用の正社員に注目し、足元の収益は好調でも、将来展望に自信のない企業(日本企業の大部分)は簡単に賃金を上げられないことを強調してきた。
だが本欄では、もう一つ別の観点からこの問題を考えてみたい。それは、現在の日本経済が労働力をどのように利用して、経済成長を支えようとしているかだ。そのために、アベノミクス期(2013年第1四半期〜18年第2四半期)を戦後最長景気期(02年第1四半期〜07年第4四半期、主に小泉純一郎政権の時期)と比較してみよう。
まず、生産年齢人口は最長景気期に累計約300万人減っていたが、アベノミクス期には約450万人へ減少幅が拡大した。一方、就業者数は最長景気期に約50万人増えたのに対し、アベノミクス期にはなんと約380万人も増えている。これを可能にしたのは、主に男性高齢者の就業増と中高年主婦の労働参加率上昇である。
しかし、この間の平均実質成長率を計算してみると、アベノミクス期は年率約1.3%で、最長景気期の同1.6%をわずかながら下回る。つまり、アベノミクス期の特徴は、就業者の頭数が増えた割に成長率が高まっていない点にある。
だから当然ではあるが、経済成長を就業者数の増加と1人当たりの実質GDP(=労働生産性)に分解してみると、最長景気期は成長のほとんど、年率1.5%弱が労働生産性上昇の寄与だった。一方、アベノミクス期には就業者数が年率で丸々1%増えているから、労働生産性の上昇はわずか0.3%程度にとどまる。
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