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ライフ #生涯現役の人生学

「スティングですけど、よろしいですか?」 映し出されたお産の感動に戦争の理不尽を思う

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好きなイギリスのロック歌手、スティングが来日した。

スティングについては古い思い出がある。かなり前に、彼の作曲過程を記録するドキュメンタリー映画が上映された。オタク物なので上映館が限られた。『ぴあ』で探して多摩方面の小屋(映画館)へ見に行った。

入り口の切符売り場で引っ掛かった。「あの、スティングですけど、よろしいですか」と売り子が聞く。「いいですよ」。意味がわからないのでそう応ずる。売り子はさらに聞いてくる。「ロバート・レッドフォードもポール・ニューマンも出ていませんけど、よろしいですか?」。これでわかった。売り子さんは、窓越しに私の年齢を推し量り、もう一本の『スティング』と勘違いして私がやって来た、と思い込んでいるのだ。

売り子さんの言うのは、確かにレッドフォードとニューマン、さらに作家のロバート・ショウ(『007/ロシアより愛をこめて』の悪役。『バルジ大作戦』のドイツ軍将校役など)が加わった、喜劇の傑作を指しているのだ。この高齢でスティングなんか知るはずがない、という前提が、彼女のキメつけの原因だ。こういう不条理な誤解は初めてではないので、私は“恕の精神(相手の立場に立て、という孔子の教え)”を発揮して、腹の虫を抑え込む。今はとにかく、スティングを見たい。こう告げる。「この映画はイギリスのロック歌手のものでしょ」「あ、ご存じならいいンです」。売り子さんは切符を売ってくれた。腹の虫はまだブツブツ言っていたが、映画の迫力に圧倒されて、たちまち黙り込んだ。

スティングは古城を借りて新曲を作り出す。バンドの仲間と泊まり込みだ。雰囲気作りがゴージャスで、すごくカネをかける。その代わり興に至ると深夜でも未明でも仕事をする。今何時かの時の観念がない。

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