2016年も残すところ4カ月であり、来年の為替相場見通しを作成するに当たっての論点を整理する時期に差しかかっている。現時点で筆者は、今後1年間の論点が過去1年間のそれと大きく変わるとは思っていない。
昨年来、筆者が重視してきたのは「政治・経済的に米国の通貨・金融政策がドル高をのむとは思えない」という論点であり、「円高というよりもむしろドル安」というトーンだ。予想はほぼ的中したといえるが、この論点は新大統領を迎える来年以降も有効だ。いや、新大統領を迎えるからこそ、容易に変わるものではないと考えるべきだろう。洋の東西を問わず、新政権1年目で通貨高を志向する可能性は低い。
「では、どこまでドル相場が調整すればドル高への反転が許されるのか」という疑問はもちろん出てくる。難しい議論だが、まずは名目実効為替相場や実質実効為替相場(物価調整後)に関し、長期平均からの乖離(図表1)を注視することが常套手段になろう。
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実質実効ドルは今年に入ってから長期平均への収斂がかなり進んでいる。しかし14年半ばからの急騰に対して十分な調整といえるのかには、やはり疑問が残る。片や名目実効ドルも今年に入ってから頭打ちになっているものの、その調整幅は実質実効ドルと比べれば限定的であり、むしろ長期平均からの一方的な上振れが続いている印象が強い。
少なくとも実質、名目実効ドル双方が長期平均を明確に割り込んで下落してこなければ、「ドル高は調整済み」という評価は難しいように思われる。言い換えれば、ドル高の調整は対円でこそ進んでいるが、実効ベースで見た場合(つまり米国の主要貿易相手国通貨対比で見た場合)はそれほど進んでいないという理解になる。これは見通し作成上、まだ多くの通貨に対して「ドル安余地がある」という含意につながる。
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