景気減速の懸念から消費増税の先送り論が勢いを増している。増税で家計消費が低迷すれば、景気を悪化させかねないからだ。しかし、家計の消費を損ねているのは消費税だけではない。経団連の試算によれば、2014年度の1人当たり現金給与総額は12年度比で11万4000円増えたものの、増加分のうち5万2000円(約46%)は社会保険料の負担増で相殺された。手取りが増えない分、勤労世帯の消費も抑えられる。消費増税が景気の悪化要因というならば、社会保険料の上昇も同様だ。
加えて社会保険料は逆進的である。非正規労働者を含む低所得層の多くは自前で国民年金や国民健康保険に加入している。国民年金の保険料は月額1万6000円ほどであり、国民健康保険料にも均等割という定額部分がある。他方、厚生年金や組合健保などで保険料の基準になる標準報酬月額には上限があり、この上限を超えて所得が増えても保険料が増加することはない。こうした仕組みが総じて社会保険料を逆進的にしている。仮に消費税が逆進的で不公平というならば、社会保険料も同じ批判を免れない。
さらに社会保険料には消費税にないデメリットがある。社会保険料は労働コストを高め、製品価格の上昇や利益の減少を通じて日本に立地する企業の国際競争力を損なう。また、雇用主から見れば、正規雇用すれば保険料の事業主負担が生じるため、従業員を非正規で雇用する誘因が働く。働き手から見ても社会保険料はいわゆる「130万円の壁」としてパートタイマー、特に女性の就労の阻害要因になっている。
こうした問題にもかかわらず、消費税とは対照的に社会保険料が社会的に受け入れられやすいのはなぜだろうか。それは、社会保険料には年金や医療保険の「給付」(受益)に対する応分の支払いという幻想があるからだ。確かに保険料支払いの実績は給付資格にかかわるが、負担と給付の水準の関係は明瞭ではない。むしろ社会保険料は税と同様に再分配的である。厚生年金の保険料は上限まで所得比例だが、給付のうち基礎年金部分は定額で受け取る。組合健保・協会けんぽは保険料収入のうち4割強が後期高齢者支援金など高齢者医療費に充当されている。この後期高齢者支援金については17年度から総報酬割が全面的に導入され、負担能力の高い保険者の拠出額が増えるなど再分配色がさらに高まる。保険という体裁に税としての実態が隠れた格好だ。
この記事は有料会員限定です
残り 491文字
