春闘の結果が順次発表されている。連合によると、定期昇給込みの賃上げ率は2.03%で、2015年の最終結果である2.20%を大きく下回っている(4月29日時点)。労働組合がない企業を含んだ日本全体の賃金上昇率は、さらに低い水準にとどまるだろう。賃上げを国内消費増加の起爆剤と期待する政権の立場からは歯がゆい状態に違いない。同時に、「これほど人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」という疑問が生まれても不思議ではない。
確かに、労働市場の関係指標は労働者にとってたいへんよい数字が出ている。3月の完全失業率は3.2%で、水準としては20年以上前の1995年8月に並ぶ。しかも、3%台の失業率が2年以上も続き、全体的に低下傾向を示してきた。こうした状況にもかかわらず、賃金上昇率は必ずしも高くない。それどころか、12年から15年にかけての雇用者1人当たり平均現金給与総額の伸びはマイナス1%だった。
それに対する一つの説明は、建設や宿泊関連といった特に人手不足が深刻な特定の業種を除き、企業は収益を賃金として従業員に還元することに慎重になっているというものだ。とりわけ、賃金のベースアップ(ベア)は企業にとって将来の固定費となるので、中長期的な成長が見込めないかぎり、ベアは企業にとってリスクの高いものとなる。企業にとっての成長期待は最近低下しており、そのような状況では積極的な投資はもとより、賃金上昇も難しい。確かに、こうした状況は十分にありうると思う。
もう一つの要因は、非正社員比率の上昇だ。給与水準の低い非正社員のシェアが高くなると、たとえ正社員と非正社員それぞれの給与水準が上がっていたとしても、全体の平均給与水準が低下するという数字のマジックが発生しうる。12年から15年にかけて平均給与が1%低下したのも、パートタイム労働者が一般労働者以上に増えた結果である。実は一般労働者とパートタイマーのそれぞれの給与は1.7%と0.6%だけ伸びていたのだ。
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