巨額損失の計上が相次いでいる。もちろん個別案件ごとに事情は異なるが、そこには共通点も見え隠れする。日本企業はリスクの意味をシステマチックに履き違えているのではなかろうか。
リスクとは、わかりやすく表現するなら、失敗の確率に投資額を掛けた積のことである。成功の保証がないところに投資を振り向けていくのが企業活動の本源である以上、失敗確率をゼロにすることは無理な相談で、いつか、どこかで、必ず損失は出る。問題とすべきは、裏目が続出して、経営が傾く事態である。
実際に傾いてしまったシャープの投資事案は、薄型テレビと太陽電池である。前者はブラウン管テレビの、後者は化石燃料の置き換えを狙っていた。過去の実績から市場規模も見えていたし、販路も確立していたので、失敗確率を低く見積もったものと推察される。
ところが、共に投資額のほうが異様に大きかった。同じテレビでもブラウン管と液晶では原理が違う。一から新たな技術を開発するとなれば、累積では巨額の開発投資と設備投資が不可欠となる。果敢に挑戦して、難度の高いイノベーションを成功させた経緯は称賛に値するが、いかんせんリスクが膨らみすぎた。その点は、太陽電池も変わらない。
それでも採算に合うとシャープの首脳陣がそろばんをはじいたのは、市場規模が巨大だったからであろう。ところが、巨大市場に引かれるのは同業他社も同様で、そういうところは熾烈な価格競争に陥りやすい。その結果、価額ベースで見た市場規模は想定を大幅に下回り、特別損失計上を余儀なくされてしまった。
日本のエレクトロニクスは、こうしてイノベーションの威力で既存巨大市場の置換を狙う戦略を堅持し続けて、かつての勢いを失ってしまった。早くはミニディスク(MD)やDRAMの失敗があったにもかかわらず、教訓を学ばなかったのであろうか。何とも残念である。
この記事は有料会員限定です
残り 686文字
