ヘリコプターマネーの議論が世界的に盛り上がっている。ヘリコプターマネーは、もともと故ミルトン・フリードマン教授が考えた「空から現金をバラまいたらどうなるか」という思考実験を指す。もう少し現実的には、中央銀行ファイナンスによる財政出動を想定すればよい。金融政策の限界が意識される中で、究極の景気刺激策としてこの案が注目され始めたというわけだ。
国債を発行して政府歳出を賄う通常の国債ファイナンスとの違いは、利払いや償還費用の有無に求められる。国債発行の場合、国債の利子を払い、償還するために将来増税が必要となるが、消費者がそれを意識すれば、財政刺激の効果が弱くなる(将来の増税を意識して行動する人をリカーディアン消費者と呼ぶ)。一方、中央銀行ファイナンスの場合は、利払いも償還も必要ないから将来の増税の必要もなくなる。それだけ景気刺激効果が大きいというのだが、本当にそうだろうか。
筆者は昨年4月の本欄「『マネタリーベース』の誤解」において、通貨発行益が生ずるのは現金(プラス法定準備)だけだと主張しておいた。現金は無利子でも自発的に保有されるものであり、償還の義務もない。だから、中央銀行が現金を裏付けに国債を保有するなら、将来の利払いも償還も心配する必要はない。
だが、超過準備の場合はそうはいかない。今のようにゼロ金利(ないしマイナス金利)の間は、超過準備について利子を払う必要はない(金融機関から利子をもらえる)が、プラス金利へと正常化されれば、超過準備については市場金利並みの利子を払うことが求められる。政府と中央銀行の統合バランスシートで考えれば、超過準備を裏付けとした国債保有は現金ファイナンスではなく、短期国債の発行と同じなのだ。
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