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ライフ #生涯現役の人生学

休刊中の同人誌を出して死にたい 二人きりで始めた思い出

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死ぬまでにやっておきたいことが一つある。目下休刊中の同人雑誌をぜひ再刊したいということだ。同人誌は『さ・え・ら』(フランス語の“あちらこちら”転じて一品料理。アラカルトの意)という。私が名付けた。同人は二人。私と生田直近だ。誌名を決めたとき、生田は「スカして(気取って)やがら」と悪態をついた。だからといって反対なのではない。「いい誌名だ」と喜び「さすがダンナだ」と褒めた。2歳年下の彼は私をそう呼び、私は彼を「チカさん」と名で呼ぶ。

生田とは、小説雑誌の懸賞応募で知り合った。昔はこの方法でしか世に出る方法はなかった。いきおい応募の常連ができ、会ったことはないが一次予選の結果発表のたびに「またアイツがいる」と互いに「おぬしやるな」と一種の親愛感を持ったものである。世に出る前の同類意識のようなものだ。生田は一人で5種くらいのペンネームを使っていた。頭隠して尻隠さずで、住所がすべて北海道になっているから私にはすぐ想像がついた。

私も生田も次席や佳作にはなったが、絶対に入選はしなかった。私の経験では本当の実力(その後も書けるかどうか)は、入選者よりもこういう層にあるような気がする。生田の家は帯広の近くで小豆を作っていたが、冷害にひどくやられて生活に苦しんだ。生田は近くのペケレベツの郵便局でアルバイトを始めた。すぐ辞めて槐(えんじゅ)の木に裸で抱きついた。この木は樹液に毒が含まれているので「裸で抱きついていれば毒が回って夢のように死ねると思ったんだ」と言っていた。しかし死ねずに東京に出てきた彼は、まず私を訪ねてきた。「かねて会いたいと思っていた」と言う。懐かしさの表明だけで生活の世話をしろなどとは一言も言わない。このへんは志を持つ者の道義なのだ。

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