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日本では物価もインフレもさほど重要ではない

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  • 小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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アメリカでは「1ドルショップ」も「1.25ドルショップ」になってしまったほどインフレが進んでいる。一方で、日本では異次元緩和で無理をしてまで、物価を上げようとしている(写真:新華社/アフロ)

物価が熱い。

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

2年前、いったい誰が「インフレが最大の経済政策上の関心事になる」と予想したであろうか。しかし、いまやアメリカは40年ぶりのインフレ率であり、欧州も同様だ。

一方、世界中で日本だけは、なぜか他国に比べて消費者物価が上がらない。インフレ、物価、これらには謎がいっぱいだ。物価とは、いったいどうなっているのか。

「物価とは何か」を解明する「世界唯一の本」が出版

これを解明する「世界で唯一の本」が近頃出版された。渡辺努・東京大学教授の『物価とは何か』(講談社選書メチエ)である。

渡辺教授は、私が最も尊敬する経済学者の1人であり、物価の理論家としては間違いなく現在世界一である。このコラムでも「なぜ日銀は無謀なインフレ政策をとるのか」「日本でも今後『ひどいインフレ』がやって来るのか」で言及した。何よりも、理論と実証という経済学の研究者というだけでなく、物価と格闘する人類最高の知性であり、現実と正面から向き合っているのである。

その彼が、真正面からぶつかった本が『物価とは何か』である。しかも、学者向けではなく、一般の読者へ向けなのだ。

物価と向き合うのは、経営者、消費者である。学者ではない人々であり、物価を決めるのも彼らであるから、その彼らに学問における物価の理解を知ってもらう必要があると彼は考えた。そして、物価の現場の彼らに理論をぶつけ、挑戦した本なのである。今回は、学者としてではなく、一般の消費者として、渡辺努教授に挑みたいと思う。

アメリカのインフレ率が2021年以降、急激に高まっている。同国の中央銀行であるFED(連邦準備制度)は「一時的な供給不足による一時的なもの」と高をくくっていたら、一時的で収まるどころか、加速し、年率7.5%という40年ぶりの高いインフレ率になってしまい、FEDは慌てて急激な金融引き締めに走っている。

なぜ、こんなインフレになってしまったのか。

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【コロナショックでむしろ景気が過熱した】

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