羽生結弦が緊急会見で怖さや言い訳を口にした訳 成功者だからこそ必要だった「9歳の自分」

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大勢の報道陣が集まった中、羽生結弦選手はマスク姿で記者会見に臨みました(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

2月10日のフリー終了後から4日後の14日18時30分ごろ、北京オリンピックフィギュアスケート男子の羽生結弦選手が現地で記者会見を行いました。この会見は、あくまで「メディア各社からの取材依頼が多く、個別対応する時間が取れないため、記者会見方式で実施する」というもので、「羽生選手から何らかの発表をする」という趣旨ではありません。

しかし羽生選手はコロナ感染予防などの観点から30分に限定された会見で、事前予想をはるかに超えるほど雄弁でした。そのフレーズを1つひとつ掘り下げていくと、羽生選手の本音と人間性、そして多くの成功者が持つ要素が浮かび上がってきたのです。

会見冒頭、司会者が「それでは質問のある方、どうぞ挙手をお願いいたします」と言った瞬間、羽生選手は左手を挙げて、「すいません。質問の前に僕から話させていただきたいことを先にお伝えさせていただきます。まずこのような形の中で正直、自分にこんなに集まってくださるとは思っていなくて、今とてもびっくりしているんですけど、みなさんの前でお話させていただく機会を設けてくださいまして本当にありがとうございます」と語りはじめました。

「自分発信の会見ではなく、メディアの要望に応える質疑応答の場でも、まずは自分から話そう」という前向きな姿勢に、誠実な人柄がにじみ出ていました。羽生選手が話しはじめたのは主に、大きな会場での会見になった経緯、金メダルを獲ったネイサン・チェン選手への称賛、そして支えてくれた人々に対する感謝の3点。なかでも特筆すべきは、「氷を作ってくださった方々」への感謝でした。

会見冒頭「氷を作った人」への感謝

羽生選手は、「この大会に関係している方々、ボランティアの方々、そして今回氷を作ってくださった方々にも感謝を申し上げたいです。ショートプログラムのときに氷に引っかかってしまって、『何かちょっと不運なミスだな』というか悔しかった部分ももちろんあります。けど本当に滑りやすくて跳びやすくて気持ちのいいリンクでした。本当にこの場を借りて感謝したいと思います」とコメント。

羽生選手はショートプログラム冒頭の4回転サルコーが1回転になってしまったミスの原因に氷の穴を挙げていました。その際、誰のせいでもなく「しょうがないこと」と言っていたものの、注目度の高いオリンピックでは誤解して関係者を責める人々がいることを踏まえてか、むしろ感謝の言葉をはっきり伝えることで、その影響を防ごうとしたように見えるのです。

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