今さらながらCPTPP加盟推進を決めた韓国の事情 自動車など製造業で日本と競合、農業への打撃も心配

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韓国貿易協会国際貿易通商研究院のチェ・ヒョンジョン通商支援センター室長は「原則的に考えて、韓国企業に利益をもたらす協定であれば加盟するのは妥当だ。とくにCPTPPには韓国製造業に敏感な問題となる日本との競争品目が含まれており、緻密な交渉戦略が必要だ」と言う。また「協定を締結することになれば、すでに加盟している日本の自動車と機械、化学分野の市場も開放されることになるが、日本企業の競争力が韓国と比べ優位にある市場であり、これには対策が必要だ」(チェ室長)。

大韓商工会議所も肯定的な反応を示しつつ、その「戦略的活用」を提案した。同会議所国際通商本部のカン・ソック本部長は「国際通商の秩序が急変する時期に、韓国政府がCPTPP加盟交渉と社会的な議論に着手すると発表したことは望ましい姿勢だ」という。そのうえで、「一部の業界や中小製造メーカーなどに加盟を心配する声もある。該当業界と企業の競争力などを考えて、国益に合うような方向で議論を進めるべきだ」とも述べた。

自動車、機械、化学分野で日本と競合

全国経済人連合会は2021年11月に「韓国政府はCPTPPへの加盟検討など、韓国企業の貿易領域を広げるためにさらに努力をしてほしい」との声明を出しCPTPP加盟を促してきた。

韓国にとって主要貿易国であるベトナムや日本、シンガポールなどからの農産品・食品が加盟後に輸入が増えると予想される。このため、韓国の農産・畜産業界が打撃を受ける可能性があり、これは韓国政府が解決すべき長期的課題だ。韓国総合農業団体協議会は声明で、「CPTPP加盟は韓国の農業の崩壊、さらには食料自給の放棄以外の何物でもない」と韓国政府に対して加盟協議撤回を要求した。

同協議会はまた、「相対的に価格競争力が高い輸入農産品が増えることは、長期的に農業生産の基盤を崩すことになる。このため、さらなる代価を支払うことになる事実を韓国政府と政界は肝に銘じるべきだ」と警告する。
(2021年12月14日付)

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