殺人事件の2割が夫婦間で起きている背景事情 全体は減少傾向にあるが親族間は増えている

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日本の殺人事件の背景を分析すると意外な真実が浮かび上がります(写真:yamasan/PIXTA)

「けんかするほど仲が良い夫婦」などとよく言われます。お互い無理に我慢することなく、言いたいことを言い合える信頼関係があるからこそ、夫婦として長続きするという意味です。

しかし、けんかにも限度があります。相手の尊厳を傷つけるような精神的虐待や身体的暴力にまで至るとさすがにそれは夫婦げんかの域を超えます。ましてや、配偶者を殺してしまう事態にまでいきつくと悲劇です。

そもそも、日本は世界的に見ても殺人事件の少ない国です。国連UNODCのデータによれば、2018年の日本の10万人当たり殺人率は0.26で、これはある程度の人口規模のある国の中では、シンガポールの0.16に次いで少ない数字です。

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ちなみに、アメリカは4.96です。日本の殺人発生件数の長期推移をみても、年々減少しています。法務省「犯罪白書」によれば、2008年まで年間1000件以上でしたが、2009年以降その大台を割り、毎年減少基調にあります。

しかし、全体の件数が減っているにもかかわらず、親族殺人率は増え続け、今や全殺人件数の半分以上が親族殺人によるものです。

親子同士よりも夫婦間の殺人が多い

親族殺人とは、「子殺し」「親殺し」「兄弟姉妹殺し」「その他親族殺し」と「配偶者殺し」があります。時代や国を問わず親子・夫婦・親族の間での殺人は一定して発生するといわれています。このことは、殺人統計における一般的パターンで「ヴェルッコの法則」とも呼ばれています。

子殺し事件としては、2019年6月に起きた、元農水事務次官の父親によって同居する無職の息子が殺害された事件がありました。親を含めた親族殺し事件としては、2020年6月兵庫県宝塚市で起きた、23歳の息子による祖母・母・弟の3人をボーガンで殺害した事件が記憶に新しいと思います。

しかし、実は、親殺しや子殺しよりも発生件数が多いのが「配偶者殺し」です。1997年から20年間終始一貫して全親族殺人事件に対する「配偶者殺し」の構成比はトップです。

また、1997年14%から2018年には19%まで増えています。日本におけるすべての殺人事件のうちの2割は夫婦間で起きているのです。(外部配信先ではグラフや図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

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