学びを保障するため、ICT環境の整備を加速
2020年4月、1人1台端末の早期実現と学校ネットワーク環境の全校整備、家庭学習のための通信機器整備支援を目的に、GIGAスクール構想の前倒しが示された。「ICTの活用により全ての子供たちの学びを保障できる環境を早急に実現」するための補正予算が計上され、教育現場では急ピッチで対応していることであろう。
6月には、新型コロナウイルス感染症対策に伴う児童生徒の「学びの保障」総合対策パッケージが、文部科学省から発表された。「授業を協働学習など学校でしかできない学習活動に重点化」するとともに、個人でも実施可能な学習活動等は授業以外の場で実施するとしている。
学習を取り戻すために、最終学年(小6・中3・高3)は優先的な分散登校など活用し、そのほかの学年については、2~3年間を見通した教育 課程編成も検討し、着実な学習保障を促す。
また、人的・物的体制の緊急整備として、教員加配(3100人)、学習指導員(6万1200人)、スクール・サポート・スタッフ(2万600人)を追加配置。そして、 ICT活用については、 端末やモバイルルーターなどをとくに家庭でICT環境を整備できない子ども向けに優先配置し、秋以降の第2波に備えるとしている。
7月17日に閣議決定された成長戦略実行計画は、「全ての小学生・中学生に1人1台のIT端末をそろえることとしたが、これに併せて、ソフト面の改革が不可欠である」と指摘。具体的には、現行制度で定められている各教科、学年ごとの標準授業時数を柔軟に増減できるよう検討を進めることとした。AIドリルなどのソフトウェアを活用することによって個別最適化した学びが可能となるためだ。そうしたさまざまなソフトウェアを試験導入できるための支援も行う。さらに、教科横断的なSTEAM学習をするためのコンテンツ開発を掲げるとともに、各教科の授業時数の2分の1未満とされている学習者用デジタル教科書使用の基準を見直す。
3つの検討課題をワーキンググループで議論
今回の教育再生実行会議で示された検討課題は下記の3つだ。まず、初等中等教育において、学校という場の重要性を踏まえつつ、今後、感染症や災害などによって休校が余儀なくされるような状況下においても、子どもたちの学びを確実に保障するための方策 。次に、高等教育においては、ICTを活用した教育環境の遅れや家庭学習の確保と支援のあり方についての課題を踏まえた、柔軟かつ強靭な仕組みの構築 。そして最後が、秋季入学、学校・家庭・地域を社会全体で支えるための「新たな日常」における働き方など、社会全体で検討が必要な事項だ。
今後、初等中等教育、高等教育それぞれにワーキンググループを設けて議論するとともに、秋入学をはじめとする3つ目の検討課題については、合同ワーキンググループで対応する。初等中等教育ワーキンググループでは、対面とICTのハイブリッド化による学び、感染症対応とICT活用のための指導体制や環境整備のあり方などについて、高等教育ワーキンググループでは対面とオンラインのハイブリッド教育をはじめ、大学設置基準等の弾力化、通年入学といった社会との接続のあり方や学事暦・修業年限の多様化、新たな留学政策、ジョイントディグリーなどの国際展開について議論される見込みだ。
政府が公表している「成長戦略フォローアップ」には、「災害や感染症の発生等による学校の臨時休業などの緊急時においても、不安なく学習が継続できるよう、少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備や ICT の活用など、ハード・ソフト・人材一体となった新しい時代の学びの環境の整備について関係者間で丁寧に検討する」とある。
今回、浮き彫りになった課題を克服するとともに、これまで議論を重ねてきたあるべき教育の姿を具現化していくためにも、教育再生実行会議が果たす役割は少なくない。(写真:iStock)