最大の変化は「教育・学習環境の重要性」への意識
今回は、内閣府が2020年6月21日に発表した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」のうち教育に関する項目の調査結果を取り上げながら、その実態を見ていく。まず「教育・学習に対する意識、その内容」の項目では、学生1035人(高校生316、大学生・大学院生594、その他〈専門学生等〉125)に対し、次のようなアンケートを行っている。
「今回の新型コロナウイルス感染症拡大前に比べて、教育・学習に関する意識に変化はありましたか」という問いに対しては、「はい」が74.9%、「いいえ」が15.8%という結果となった。
次に「どのような意識の変化がありましたか。重要なものから順に回答してください(複数回答)」という問いでは、「教育・学習環境の重要性を意識するようになった」が全体の75.6%を占め、続いて「教育・学習自体の重要性を意識するようになった」が64.3%となった。ほかにも「教育・学習における主体性、能動性を意識するようになった」が55.5%、「多様な学びや経験の重要性を意識するようになった」が36.1%となった。
今までのような対面の授業がしづらくなったために、新たな環境の整備および教育や学習それ自体の方法について、学生自らが苦悩する様子がうかがえる。ただ、その一方で、教育や学習の重要性を再認識する傾向も見られ、「主体性・能動性」や「多様な学び」について新たな視点を獲得できたともいえる。
東京23区でオンライン受講率69.2%、一方地方は…
こうした現状の打開策として注目されているのが「オンライン教育」だ。しかし、日本のICT教育の整備は、世界と比較して周回遅れといわれており、オンライン教育の実施率も地域差が発生しているという。今回、子育て世帯2168人(子どもが18歳未満)を対象に行った調査でも小学生・中学生のオンライン教育の受講率が地域により大きく異なることが浮き彫りとなった。
例えば、「今回の感染症の影響下において、あなたの子どもが経験した教育を全て回答してください」という問いでは、全国で「オンライン教育を受けている割合」は「受けていない」が52.5%で、「受けている」の45.1%を上回っていることがわかった。
オンライン教育が最も進んでいるのは、東京23区で69.2%だった。大阪・名古屋圏でも52.2%がオンライン教育を受けており、大都市圏ではオンライン教育が浸透しつつあることがわかった。その一方、地方圏では63.8%がオンライン教育を受けておらず、大都市圏と地方圏では大きな差が発生していることが判明した。
また、「学校の先生からオンライン授業を受けている割合」も全国では10.2%にすぎなかった。最も多いのは東京23区の26.2%で、地方圏では6.7%だった。オンライン授業の内容については「学校から家庭用のオンライン教材の提供を受けている」が15.2%で最も多く、学校の先生はオンライン教育にまだ十分に対応できていないことがわかる。
他方、「学校以外の塾や習い事でオンライン教育を受けている割合」は全国で17.1%となった。こちらも傾向は同じで東京23区が33.8%と高く、地方圏が11.6%と低かった。ここでは「学校」よりも「塾や習い事」のほうが全体的にオンライン教育の比率が高く、学習塾などがオンライン教育を積極的に推進し、変化に対応しようとしていることが見て取れる。
二極化進む勉強量、大学生・大学院生は約75%がオンライン授業
では、大学生や高校生のオンライン教育はどうなっているのか。今回の調査では、学生の学習時間の増減が二極化し、オンライン受講率も大学と高校で大きく異なることがわかった。
実際、「今回の感染症拡大前に比べて、学習時間(自習、授業、研究等の合計時間)はどのように変化しましたか」という問いでは、全体の増減の比率を見ると、「減少」の比率のほうが高くなっている。増減別に見ると、「やや増加」が21.2%と最も多いものの、「大幅に増加」6.5%や「増加」8.8%に対し、「大幅に減少」が14.4%、「減少」が14.6%、「やや減少」が14.7%と、学習時間の減少のほうが目立つ形となった。
また、「通学している学校で、オンライン授業を受講しましたか」という問いでは、受講したという「大学生、大学院生」が74.7%と「高校生」の13.3%を大きく上回っており、高校生の50%がオンライン授業を受講していないという結果となった。
こうした現状を見ると、日本のオンライン教育はまだ浸透しておらず、東京をはじめとする首都圏がリードしているものの、地方では大幅な遅れが出ているといえる。今後、地域差を是正するためにも、地方のICT教育の整備を優先的に進めていくべきだろう。