文部科学省の「学校安全の推進に関する有識者会議」は2023年8月24日、第2回会合を開いた。有識者会議では「学校事故対応に関する指針の見直し」と「学校の安全点検のあり方」についてそれぞれワーキンググループ(WG)を設置して議論を進めており、年度内に4回の会議で具体策をまとめる予定。
「死亡事故の調査に保護者の同意は不要」との意見
学校事故対応に関する指針の見直しに向けたWGでは、学校で起きた事故について被害者や家族に配慮した支援が不十分だったり、事故の詳細な調査や国への報告がされてこなかったりしたことを受け、全国の教育委員会を対象に現指針運用に関する実態調査と、詳細な調査を行ったことのある教育委員会にヒアリングをして改善のための検討を進める。
この日はWGが過去3年間の状況について7月31日までに行った実態調査(回答は約7割)で得たデータを暫定値として報告。指針運用に関する周知の方法は現在「学校安全ポータルサイト」に掲載されているが、有識者からは「ポータルサイト自体が知られていないと聞いた。指針の内容をしっかり理解して活用できるようなやり方を考えないといけない」と意見が出た。
また現状では死亡事故の調査対象が「保護者の意向を踏まえ」となっていることに対し、「死亡事故に関しては保護者の同意があろうがなかろうが検証する必要がある」との指摘もあった。
作成する安全点検の要領の「仮称」に注文も
一方で、学校の安全点検のあり方を検討するWGでは、学校施設の老朽化が進む中、教員が不具合を判断する基準が明確ではなく、老朽化による重大事故が断続的に発生していることから、各学校を対象に安全点検に関するヒアリングや、外部人材を活用した安全点検の好事例を収集して検討し、「教職員のための安全点検要領(仮称)」を作成する。
会議では、WGがこれまでに行ったヒアリングなどをもとに、教職員が担う安全点検についての案を提示。案では教職員の主な役割として「授業などの業務に付随して行う日常点検の範囲で、専門性を持たなくてもいい箇所を点検し、異常を早期発見する」とし、校内施設や遊具の点検を定期(毎学期に1回以上か毎月1回以上)で主に目視で確認する、とした。一方、金属疲労や亀裂・腐食、転倒の恐れなど専門性がないと変化や劣化に気がつきにくいものには専門家が関わる、とした。
これに対し、「目視といっても教職員の中にはそもそもどう目視したらいいのかわからない人もいる。教職員が見て点検方法がわかるもの(要領)を作る必要がある」などの声が上がった。
要領の仮称についても「安全点検は、全体を通して誰がどういう役割分担をやるのかがとても大事。この仮称では、教職員が担う安全点検についてのみ書かれているように受け取れる」との指摘が出た。
調査元:https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00582.html
(注記のない写真:とんとん / PIXTA)