世界レベルの起業家たちが持つ「型」とは? EY Japan

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同じお金やものでも、与えられた人によって捉え方が異なるということだ。ラヴァルは、人間の根源的欲求や心理を理解し、それらに沿ってグループをまとめ上げている。その結果、デヴキグループの従業員のモチベーションは高く、工場でストライキが起きたことはないという。ケニアでは工場でストライキが起きることは日常茶飯事だというにもかかわらず。

「従業員たちは、会社も工場も自分たちのものだと思っているからです。しっかりと働いて、もし望むならあなたの子どももグループで働けるということを伝えていますし、子どもたちの教育費も会社が出しています」

デヴキグループ会長、ナレンドラ・ラヴァル(ケニア代表)

それだけでなく、事業の拡大に伴いラヴァルは個人で寄付を行い、今では8つの学校をケニアの地方で運営している。貧しい子ども向けのそれらの学校では、教育、食事、医療が無償で受けられるのだという。16年にはケニア国内の納税額トップになった。

「型破り」に話を戻そう。

WEOYに輝いたキーウェルの最初のビジネスは、6歳のときに始めたグリーティングカードの販売だったという。6歳のキーウェル少年にビジネスの型があるはずもないが、だからグリーティングカード事業はスケールしなかったのだろうか。

ケニアのラヴァルが小さな製鉄所を始めたときに、ビジネスの型などなかったはずだ。それでも、デヴキグループは来年には従業員1万人に到達し、まだ拡大する見込みだという。

ビジネスにおける型とは、アントレプレナー個人の「やらなければならないこと」、アントレプレナーとしての「譲れない使命」なのではないだろうか。そしてそれを愚直に続けることで初めて「型」を破り、ブレークスルーすることができる。モナコで話を聞いた4人のアントレプレナーの言葉からはそんな仮説が成り立つ。

ラヴァルにWEOYの発表について、つまりウィナーになる自信を聞いたときの答えが印象的だ。

「私は、勝つために来たのではなくて『成功』するためにモナコに来ています。成功というのは、より多くの人の人生をいい方向に変えることです。明日ウィナーになったとしても、誰の人生にも影響を与えなかったら意味がないんです。逆にウィナーになれなくても、より多くの人の人生を変えたら成功ですよ」

ラヴァルにとって「やらなければならないこと」は、多くの人の人生を変えることだ。きっとそれは創業から変わっていないのだろう。そしてその数は「型破り」と形容できるほどの人数に達している。

(敬称略)