本格ワインを、家で「1杯から楽しめる」革新性 サントリー
本格ワインを、250mlだけ
缶というとカジュアルな印象を受けるが、中味はフランスの名門ワイナリー・ジョルジュ デュブッフ社が厳選した単一品種100%のワインで、IGP PAYS D’OC(※)の格付けを持つ本格派。缶のデザインも洗練されており、従来の缶入り酒のイメージとはかけ離れている。大手ECサイト4つと自社ECサイトでの限定発売というのもユニークだ。
※フランスのワイン法における格付けでVin de Franceの上のクラス
ネット上ではすでに反響を呼んでおり、販路の1つであるAmazonでは、酒類の売れ筋ランキングをはじめ、複数ランキングで1位を獲得(2021年11月
「ONE WINE」がここまで支持を集める理由はどこにあるのか。当然、SNS映えする見た目や、缶ワインにして“本格派”をうたう新鮮さもあるだろうが、本質的には「本格ワインを、250mlサイズで飲める点」ではなかろうか。
徹底した顧客分析が教えたこと
本格ワインといえば、瓶入り商品が圧倒的に多い。瓶の容量は一般的に750mlサイズで、一回で飲みきるにはなかなかの量だ。品質劣化を考えると、冷蔵庫で保管しつつ2〜3日続けて飲むか、もしくはやむなく捨てざるをえないケースも少なくない。したがって、本格ワインを飲むシーンは、人が集まる場や、ゆっくり時間を取って休める特別な日などに限定されやすい。
一方、「ONE WINE」の容量は瓶入りの3分の1に当たる250mlで無理なく飲みきれる。実際は、グラスワインで2杯近くになるため、“もうちょっと飲みたい”という欲求や、2人飲みのニーズもしっかり満たしてくれる。
こうした新しいワインのあり方はどう導き出されたのか。その背景には、同社でも類を見ない徹底した顧客分析があった。
サントリー デジタルマーケティング本部 神藏ほのか氏はこう話す。
「開発に当たって、ソーシャルメディア分析やユーザー様への実地インタビューを通したワイン調査を徹底的に行いました。そこで多かったのが、『750mlだと飲みきれない』という意見。ほかにも『瓶のワインは開栓が大変』『ワインのラベルを見ても内容がよくわからない』『ワインにはハードルの高さを感じる』などの声が挙がりました。
課題がきちんと見えたことで、これらを解決すれば『本格ワインを日常で気軽に楽しむ』という新しい体験を届けられるのではないかと考えたんです」
「どかされない」缶を目指して
コンセプトの決定以降も、あくまで「ユーザーの体験」を最優先にした具現化がなされていったという。味の設計では、ターゲットとなる「特別な日にしかワインを飲まない20~40代」に一般的なワインを試飲してもらい、どんな味なら「おいしい」と感じるか細かく調査。そして、おいしさの理由となった要素を残し、逆においしくないと言われた要素は排除していった。
缶のデザインについても、これまでのように「売り場でいかに目立つか」ではなく、ユーザーと缶が最も近くなる「飲む瞬間」に焦点を当てたという。「飲むときの快適さを追求したミニマルデザインを採用しました。目指したのは、空間の邪魔にならず、どんなシーンにもマッチするデザイン。もう一つの目標は『食卓の写真を撮るときにどかされない缶』でした(笑)」(神藏氏)。
実は、販路をECに限った理由も、顧客体験を重視した結果だそうだ。同社デジタルマーケティング本部課長 吉田紗知氏はこう話す。
「価値観が多様化する時代、万人が『絶対いい!』と思う商品を届けることは難しくなっています。そこで、まずはECで小さく始めることにしました。いきなり店頭で販売しても、初動の売れ行きが伸び悩めばそのまま撤退せざるをえません。ECならデータを通して直接お客様とつながれるので、フィードバックを基に素早くPDCAを回して商品価値を高めつつ、着実に皆様に知っていただくことができます」
デジタルが「直感」を導く意外
一方で、サントリーコミュニケーションズ デジタルマーケティング本部 部長・馬場直也氏は、こう俯瞰する。
「デジタルを活用したマーケティングを徹底的に行った末に、むしろこうしたゆったりしたデザインに着地したという事実は、自社のことながら非常に面白く感じますね。通常であれば、調査で判明したユーザーに刺さるキーワードなどを詰め込みたくなるところですが、お客様視点を追求した結果、ミニマルでゆったりとした、直感的なプロダクトになったというのは新たな発見でした」
「ONE WINE」は現在4種類を展開しており、今後販売チャネルの拡大についても検討中だという。また、プレゼント仕様での販売も開始した。
本格ワインを、特別な日ではなく、日常で気軽に楽しむ。それにより毎日が「ちょっと特別なもの」に変わる。「ONE WINE」には、私たちの日々の暮らしを変える力が秘められているかもしれない。
【ONE WINE特設サイト】
https://onewine.direct.suntory.co.jp/