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本格ワインを、家で「1杯から楽しめる」革新性 サントリー

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本格ワインを、250mlだけ

 去る10月26日、ワインとの向き合い方を根本から変えるような新製品が発売された。それが、缶で飲むワイン、「ONE WINE(ワン ワイン)」。発売元は、サントリーワインインターナショナルだ。2019年から開発を進め、コロナ禍を含む3年の月日ののち、満を持してリリースされた。

缶というとカジュアルな印象を受けるが、中味はフランスの名門ワイナリー・ジョルジュ デュブッフ社が厳選した単一品種100%のワインで、IGP PAYS D’OC(※)の格付けを持つ本格派。缶のデザインも洗練されており、従来の缶入り酒のイメージとはかけ離れている。大手ECサイト4つと自社ECサイトでの限定発売というのもユニークだ。

※フランスのワイン法における格付けでVin de Franceの上のクラス

ネット上ではすでに反響を呼んでおり、販路の1つであるAmazonでは、酒類の売れ筋ランキングをはじめ、複数ランキングで1位を獲得(2021年11月1日調べ)。Twitterでも好意的な意見が多く寄せられ、同商品に関するツイートは10月末時点で約7000を記録。8月31日から行った応援購入サービス・Makuakeでの先行発売においても、予定販売数の2000本がたった1日で完売したという。

「ONE WINE」がここまで支持を集める理由はどこにあるのか。当然、SNS映えする見た目や、缶ワインにして“本格派”をうたう新鮮さもあるだろうが、本質的には「本格ワインを、250mlサイズで飲める点」ではなかろうか。

徹底した顧客分析が教えたこと

本格ワインといえば、瓶入り商品が圧倒的に多い。瓶の容量は一般的に750mlサイズで、一回で飲みきるにはなかなかの量だ。品質劣化を考えると、冷蔵庫で保管しつつ2〜3日続けて飲むか、もしくはやむなく捨てざるをえないケースも少なくない。したがって、本格ワインを飲むシーンは、人が集まる場や、ゆっくり時間を取って休める特別な日などに限定されやすい。

一方、「ONE WINE」の容量は瓶入りの3分の1に当たる250mlで無理なく飲みきれる。実際は、グラスワインで2杯近くになるため、“もうちょっと飲みたい”という欲求や、2人飲みのニーズもしっかり満たしてくれる。

その日の気分で選べる4種類を展開する

こうした新しいワインのあり方はどう導き出されたのか。その背景には、同社でも類を見ない徹底した顧客分析があった。

サントリー デジタルマーケティング本部 神藏ほのか氏はこう話す。

サントリーコミュニケーションズ
デジタルマーケティング本部
神藏 ほのか氏 

「開発に当たって、ソーシャルメディア分析やユーザー様への実地インタビューを通したワイン調査を徹底的に行いました。そこで多かったのが、『750mlだと飲みきれない』という意見。ほかにも『瓶のワインは開栓が大変』『ワインのラベルを見ても内容がよくわからない』『ワインにはハードルの高さを感じる』などの声が挙がりました。

課題がきちんと見えたことで、これらを解決すれば『本格ワインを日常で気軽に楽しむ』という新しい体験を届けられるのではないかと考えたんです」

「どかされない」缶を目指して

コンセプトの決定以降も、あくまで「ユーザーの体験」を最優先にした具現化がなされていったという。味の設計では、ターゲットとなる「特別な日にしかワインを飲まない20~40代」に一般的なワインを試飲してもらい、どんな味なら「おいしい」と感じるか細かく調査。そして、おいしさの理由となった要素を残し、逆においしくないと言われた要素は排除していった。

食卓を撮影するとき、料理と一緒に写してもらえるデザインを目指した

缶のデザインについても、これまでのように「売り場でいかに目立つか」ではなく、ユーザーと缶が最も近くなる「飲む瞬間」に焦点を当てたという。「飲むときの快適さを追求したミニマルデザインを採用しました。目指したのは、空間の邪魔にならず、どんなシーンにもマッチするデザイン。もう一つの目標は『食卓の写真を撮るときにどかされない缶』でした(笑)」(神藏氏)。

サントリーコミュニケーションズ
デジタルマーケティング本部 課長
吉田 紗知氏

実は、販路をECに限った理由も、顧客体験を重視した結果だそうだ。同社デジタルマーケティング本部課長 吉田紗知氏はこう話す。

「価値観が多様化する時代、万人が『絶対いい!』と思う商品を届けることは難しくなっています。そこで、まずはECで小さく始めることにしました。いきなり店頭で販売しても、初動の売れ行きが伸び悩めばそのまま撤退せざるをえません。ECならデータを通して直接お客様とつながれるので、フィードバックを基に素早くPDCAを回して商品価値を高めつつ、着実に皆様に知っていただくことができます」

デジタルが「直感」を導く意外

一方で、サントリーコミュニケーションズ デジタルマーケティング本部 部長・馬場直也氏は、こう俯瞰する。

「デジタルを活用したマーケティングを徹底的に行った末に、むしろこうしたゆったりしたデザインに着地したという事実は、自社のことながら非常に面白く感じますね。通常であれば、調査で判明したユーザーに刺さるキーワードなどを詰め込みたくなるところですが、お客様視点を追求した結果、ミニマルでゆったりとした、直感的なプロダクトになったというのは新たな発見でした」

ギフト用ボックスでの注文も開始した(写真左)

「ONE WINE」は現在4種類を展開しており、今後販売チャネルの拡大についても検討中だという。また、プレゼント仕様での販売も開始した。

本格ワインを、特別な日ではなく、日常で気軽に楽しむ。それにより毎日が「ちょっと特別なもの」に変わる。「ONE WINE」には、私たちの日々の暮らしを変える力が秘められているかもしれない。

【ONE WINE特設サイト】
https://onewine.direct.suntory.co.jp/

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