希少な「ムーンスウォッチ」をオークションに出品 オメガ
2024年2月12日、スイスの高級腕時計ブランドであるオメガは、希少なモデルをまとめた「ムーンスウォッチ ムーンシャイン ゴールド スーツケース」11点をサザビーズでのオークションに出品した。オークションハウスが査定した落札予想価格は5000~1万スイスフラン(約85万~170万円、1スイスフラン=170円で換算)だが、2月13日時点ですでに1万スイスフラン(約170万円)の入札があり、最終的な落札価格はさらに上昇していくものと思われる。
もともと1本当たり4万5100円で売られていた腕時計が、なぜこれほどの価値を生み出しているのか。そこには幾重にも積み重ねられた希少性と、多くの人が支持したくなるブランドの理念があった。
希少性を知るには、「ムーンスウォッチ」誕生の経緯からひもとかなければならない。22年3月、同じ時計製造グループに属しているオメガとスウォッチによる異色のコラボとして「ムーンスウォッチ」が誕生した。人類初の月面着陸を果たした宇宙飛行士が身に着けていたオメガの「スピードマスター」、通称「ムーンウォッチ」のデザインと、スウォッチが開発した革新的なバイオセラミックケースを融合。宇宙と惑星からインスピレーションを受けた11色のカラー展開や、手頃な価格を実現したことでも話題に。発売日に銀座のブティック前に長蛇の列が築かれたことは、全国的なニュースとなった。数量限定モデルではないものの、発売からおよそ2年が過ぎた現在も在庫が不足するほどの人気を誇っている。
そうした人気を背景に、23年に特別モデルとして登場したのが「ムーンスウォッチ ムーンシャイン ゴールド」だ。これは「ムーンスウォッチ」をベースに、「ムーンシャイン ゴールド」でコーティングしたクロノグラフ秒針を新たにセットしたもの。暗い夜空に輝く月の光に着想を得てオメガが独自開発したイエローゴールドで、より繊細な美しさと気品に満ちたデザインへと昇華させた。
また、満月の日だけに発売するという風変わりな販売方法や、毎月異なるデザインに仕上げたことも注目された。例えばフラワームーンと呼ばれる5月のモデルには秒針にフラワーパターンを描き、ストロベリームーンと呼ばれる7月のモデルにはイチゴ模様を刻印。1年を通して全11本が発売された「ムーンスウォッチ ムーンシャイン ゴールド」は、時計コレクターたちの憧れの的となった。
今回出品されたのは全11本の「ムーンスウォッチ ムーンシャイン ゴールド」を1つにまとめたセットであり、オークションが大盛況なのも納得だ。
収益は国際NPO団体に全額寄付される
もう1つ注目されているのが、これがチャリティーオークションであることだ。オークションの収益はオメガが長年のパートナーとしているオービス インターナショナルに全額寄付される。オービス インターナショナルは子どもたちを中心に眼科治療を行い、失明の予防に尽力してきた国際的な非営利団体。航空機MD-10内に最先端の認定眼科病院を設けた“空飛ぶ眼科病院”が有名で、同機は世界各地で何百回もの医療や眼科治療を実施してきたという。オメガは同団体を2011年からサポートしており、今回のオークションもその活動の一貫だ。
オービス インターナショナルを支援する姿勢は、「ムーンスウォッチ ムーンシャイン ゴールド スーツケース」そのものにも表れている。“空飛ぶ眼科病院”が乗り入れる世界中の空港を称え、ケース側面に特定の空港コードを刻印。例えば「東京エディション」では11本すべてに“HND”のコードが、「チューリッヒエディション」では11本すべてに“ZRH”のコードが刻まれているといった具合だ。
このほか、オービス インターナショナルをイメージさせるブルーの特製スーツケースや、オメガ×スウォッチのロゴが入ったゴールドのキズミ、空港コードを刻印したコインもセットになっている。製品そのものの希少性はもちろん、積極的に社会貢献活動を支援しようというオメガの理念もオークションへの関心を高めている。
「ムーンスウォッチ ムーンシャイン ゴールド スーツケース」のオークションは、2月24日まで。いくらで落札されるのか予想はつかないが、落札額がニュースとなることはおそらく確実だろう。