世界レベルの起業家たちが持つ「型」とは? EY Japan

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アップテイクテクノロジーズCEO、ブラッド・キーウェル(アメリカ代表)。2019年の世界一のアントレプレナーに選ばれた
6月にモナコ公国モンテカルロで開かれたEYワールド・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2019 TM(以下、WEOY)。1986年にEYによりアメリカで創設されたこの賞は、2001年からモナコを舞台に世界大会が開催されるようになり、「代表」として各国を背負ったアントレプレナーたちが集う場にもなっている。19年大会のテーマは「mold-breakers=型破り」。47の国と地域を代表する57人のアントレプレナーが世界一を競い合ったこの「型破り」なイベントを、彼らの言葉を通じて見ていきたい。

WEOYはアメリカ代表のキーウェルに

「型破り」を辞書で引くと、「一般的、常識的な型や方法にはまらないこと。また、そのようなやり方であるさま」(デジタル大辞泉 2019年4月現在/小学館)とある。この言葉に付いて回る指摘として、型破りな人が「型」を身に付けていない場合はただの非常識だ、型なしだというものがある。型が大事なものであるという主張だ。それが正しいと考えたときに、ビジネスに当てはめるとどうなるだろうか。起業して事業を軌道に乗せるためにはどのような「型」が必要なのだろうか。MBA、コミュニケーション能力、先見性、リーダーシップ……、それら全部だろうか?

19年のWEOYに選ばれたのは、アップテイクテクノロジーズ(アメリカ)を率いるブラッド・キーウェル。キーウェルは6社を起業した後、14年にアップテイクテクノロジーズを創業した。予測分析を得意とする同社は、センサーが発するデータを基に、機器の故障など不測の事態が発生する可能性を事前に顧客に伝えるという事業で急成長し、企業価値は20億米ドルを超える。「ダブルユニコーン」に到達した最速の企業でもある。

WEOY受賞後のスピーチで、キーウェルは次のように語った。

「アントレプレナーをアントレプレナーたらしめる理由は、やりたいことをやることではなく、『やらなければならないこと』をやることにある」

昨今、社会課題の解決をコア事業に据えた起業家を「ソーシャルアントレプレナー」と呼ぶが、それに近い。ノルウェー代表のペール・グリーグも当てはまるだろう。

グリーグシーフードASA会長、ペール・グリーグ Jr.(ノルウェー代表)

1992年に創業したグリーグシーフードASAを世界有数のサーモン養殖企業に育て上げているが、ビジネスの軸に据えているのはサステイナビリティーだ。

「養殖は、海、つまりパブリックエリアで行いますから、持続可能な環境にしていくことが大事です。これはCSR活動として地球にいいことをしようという文脈ではなく、ビジネスとサステナビリティは一体になっています。人口がこのまま増えると、食料の問題も起きるかもしれません。動物性タンパク質を効率的に摂取するには、サーモンが優れています。1キロの餌をあげれば1キロ増えますから」

※ユニコーン:評価額が10億米ドル以上の非上場ベンチャー企業。ダブルユニコーンはその額が20億米ドル以上

エシカルアプローチの重要性

「やらなければならないこと」という意味では、イタリア代表のソニア・ボンフィグリオリも共通する。大型建設機器からフォークリフトまで、幅広い産業用ギアボックスを手がけるボンフィグリオリ・リドゥットリの2代目社長となったのは2010年のこと。

だが、この年の業績はリーマンショックから続く不況を受けて4000万ユーロの赤字と、最悪のタイミングだった。創業者である父が死去したことによる事業承継だったこともあり、周りからは「会社を売ったほうがいい」と真剣にアドバイスされたという。

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