鉄道「新線トンネル切り替え」で失われた絶景 スイスは観光と非常時用に旧路線も存続

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そこで、イタリア鉄道のインフラ部門であるRFI社は、カーブの少ないトンネルによって一気にショートカットできる新線を建設し、既存の路線を放棄することを決定。まず音楽祭で有名なサンレモ周辺の地下・複線化を2001年に完了、その後ジェノヴァ方面へトンネルの建設を進め、前述のゴッタルドベーストンネルと同じ2016年12月の冬ダイヤ改正で、アンドーラまでの区間が新線へ切り替わった。

新線区間の最高速度は、旅客列車で時速200km、貨物列車も時速100km以上とされており、旧線時代はともに時速80~90km程度だったことを考えれば、新幹線開業ほどのインパクトはないまでも、格段に進歩したことがわかる。

その陰で、二度と列車が通過することがなくなった旧線は、線路が撤去されて、一部は歩行者・自転車専用道などへ転用される計画だ。この旧線にあったいくつかの駅は廃止され、数㎞~十数㎞も離れた山間に駅が集約され設置されている。旧線沿線にある村や町の住民は、列車を利用しようと思ったら、車などを使ってこれらの駅まで行かなければならなくなった。都市間移動者にとっては利便性が向上したが、地域住民にとっては不便になった感は否めない。

失われた絶景スポット

また、旅好きの人たちにとってことのほか残念なのは、美しい車窓風景が失われてしまったことである。このジェノヴァ―ヴェンティミリア間の路線は、有名なヨーロッパ鉄道時刻表(旧トーマスクック時刻表)の編集部がお勧めする景勝路線に指定されるほど、実に風光明媚な路線として知られていた。

イタリアの地中海沿いルートで、路線付け替えのため廃線となった旧線跡。線路やトンネルなどは一部が歩行者・自転車専用道などに整備されたが、そのまま朽ち果てている場所も多い(筆者撮影)

それが2001年の最初の線形改良で、サンレモ付近はトンネルのある新線へ移設、旧サンレモ駅周辺の有名な撮影地であった、線路と並行に植えられたヤシの並木を拝むことができなくなってしまった。

そして2016年12月、2回目の線形改良が行われた結果、これまたイタリアの鉄道写真では最も有名な場所として名高い、チェルヴォ周辺の風景が失われた。

チェルヴォの村は、旧線に寄り添うような形の小高い丘の上に、びっしりと石造りの家々が立ち並び、その中央には空へ真っすぐ伸びる鐘楼が特徴の教会が立つ。まさに幻想的という言葉がしっくりくる、非常に美しい景色の場所なのだが、今やこの風景を列車と共に拝むことはかなわず、山側に完成した長大なトンネルの中を列車はひたすら猛スピードで通過していく。

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