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「自分は出世の大通りにいない」30代で悟った元ホンダF1エンジニアが脱サラ→45歳で選んだ"意外すぎる"第二の人生

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是本健介さん
ホンダの開発者が異業種で起業することを選んだ理由とは?(写真:是本さん提供)
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試作の拠点になったのは、義父の故郷である長野県佐久市だ。妻の祖母が暮らしていた空き家があり、勤務先のある宇都宮から週末に通った。紹介してもらった酪農家から乳を分けてもらい、台所でチーズを作る。土日で固めたチーズを宇都宮に持ち帰り、ワインセラーで熟成させた。

初めて手がけたのは、ヤギの乳を酸で固め、水分を抜くシェーブルタイプのチーズだった。食べる経験を積んでいたため、自分の出来をほかのチーズと比べることができた。「意外とうまくいった」。その手応えが、さらにのめり込むきっかけになった。週末の佐久では、妻が畑や乗馬、温泉を楽しむ一方で、是本さんはチーズ作りに没頭した。ただ、台所を占領してしまい、怒られることもあった。

佐久に通う内に、地域の食に関わる仲間が増えていった。試作品を食べてもらい、感想を聞く。みんなが、食を通して地域を盛り上げたいと考えていた。

「この人たちと一緒に、チーズで盛り上げたいなって。もともとあった、いつか起業したいという思いが、そこで少しずつ出てきました」

仕事は面白い、それでも別の道に進んだ理由

自信につながった出来事もある。来日したフランス人講師に試作品のチーズを食べてもらったところ、「トレビアン」「ペルフェクション」(編註:「完璧」の意)と評価されたのだ。周囲の仲間からも一定の評価を得ており、「もしかしたら、いけるんじゃないか」と思えるようになった。

もうひとつ、是本さんを引きつけたのは、食べる人との距離の近さだった。

自動車の開発では、仕様を決めて工場に引き継ぎ、製造され、ディーラーを経て顧客に届く。開発者が使う人と直接話す機会は多くない。一方、チーズは自分で作り、顧客や料理人と話ができる。自分のチーズが料理に使われる面白さもある。

「エンジニアの要素もあるし、細かい作業をするメカニックや、デザイナーみたいな要素もある。研究者、経営者、営業、講師と、いろいろなことができて、世界が広がる。非常に魅力的だなと思うようになりました」

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