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このところ、台湾・台北の街はとてもにぎやかだ。
11月28日に投票が行われる台湾の統一地方選挙が近づき、選挙ムードに街が染まり、候補者の看板や広告ポスターなどがあちらこちらに現れている。今回の選挙では全22県市の首長や議員などを一斉に選ぶ。その中でも注目を集めているのが、台湾政治の中心である台北市長選挙だ。
まさかの接戦にもつれ込んだ首都決戦
今回の首都決戦では国民党所属の現職・蒋万安氏と、民進党所属の立法委員(国会議員)・沈伯洋氏が激戦を繰り広げている。台北は国民党が強いとされる街だが、直近は複数の世論調査で沈氏の支持率が蒋氏を上回るなど、まさかの接戦にもつれ込んでいる。
最近、よく耳にするのが「洋流」という言葉だ。沈伯洋氏の名前の「洋」と海流の「流」を組み合わせたもので、ニックネームの「Puma(プーマ)」とともに、支持者たちの間で親しまれている。沈氏が市場や夜市を訪れると大勢の人が集まり、写真やサインを求める行列ができる。そんな光景が台北をはじめ、台湾各地で見られるようになった。
台湾の選挙が賑やかなのは、別に珍しいことではない。ただ、今回の「洋流」には、これまでとは少し違う熱気を感じる。単に候補者を応援するのではなく、支持者自身が当事者として政策を考え、自分たちの暮らす街の未来を一緒につくっていこうとする、前向きな空気があるのだ。
そんな様子から思い出すのが、コロナ禍の初期に台湾で広がった「防疫共同体」の感覚である。
コロナ禍が本格化した2020年、台湾政府は連日のように記者会見を開き、感染状況や対策について説明した。記者たちの質問にも時間をかけて応じ、市民の疑問や不安を解消しようと努め、偽情報にもユーモアやわかりやすい図解で対抗した。もちろん、当時の政策がすべてうまくいったわけではない。それでも、未知の感染症を前に、透明性と市民参加を大切にしながら解決策を探っていく姿勢には、台湾社会のレジリエンス、つまり困難に直面しても立ち直ろうとする力が表れていたように思う。
もっとも、台湾という複雑な社会の舵取りは、決して簡単ではない。
実際、台北市長選挙は激しい争いとなっている。10月28日発表の『聯合報』の世論調査では、沈伯洋45%、蒋万安41%と、わずか4ポイント差。一方、同じ調査で「どちらが当選すると思うか」と尋ねたところ、蒋万安48%、沈伯洋35%と、現職の再選を予想する人のほうが多かった。ほかの調査では異なる結果も出ており、投票日まで目が離せない状況が続いている。
「名門の貴公子」蒋万安と、市民が感じる不公平
現職の蒋万安氏は、蒋介石のひ孫にあたり、台湾政界でもその家系が注目され、未来の総統候補とも目されてきた人物だ。名門とされる建国高校から国立政治大学に進み、アメリカのペンシルベニア大学で法律を学んだ後、弁護士として働いた経歴を持つ。端正な顔立ちで人気もある。一方、最近は落ち着いた話し方や慎重な受け答えに終始して、突発的な問題への対応や市民への説明のあり方が問われる場面も目立つ。
蒋市政はこの4年間、育児家庭への支援や学校給食の無償化、「受動喫煙ゼロ都市」構想など、暮らしに関わる政策を進めてきた。施政満足度も各種調査でおおむね約5割を超える。しかし、今年に入って幼稚園での不適切な保育や学校給食の衛生問題が相次いで表面化。国民党議員が立法院(国会)で与党の妨害を続ける振る舞いも影響し、当初は盤石とみられていた現職を沈が追い上げた。
とりわけ注目されたのが、街路樹をめぐる問題だ。


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